作品情報 2019年フランス映画 監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ 出演:ヴァンサン・カッセル、レダ・カテブ、エレーヌ・ヴァンサン 上映時間114分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ 2020年劇場鑑賞200本
ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村
【ストーリー】
パリの自閉症児支援団体の「正義の声」代表のブリュノ(ヴァンサン・カッセル)。一人で電車に乗ると非常ベルを押してしまう少年ジョゼフ(バンジャマン・ルシュール)や、すぐに暴れて壁などに頭突きをかましてヘッドギアを外せないヴァランタン
(マルコ・ロカテッリ)など、多くの問題を抱えた子供たちのケアに寝る間もない。資金も乏しいが、他の団体が預からないような重度の子供も、「なんとかなる」と笑顔で面倒をみていた。
正義の声に協力しているのが、ドロップアウトした青少年の社会復帰を図る団体「寄港」の代表マリク(レダ・カテブ)。寄港の青少年が自閉症児の介助人として働いているのだ。ところが、国は未認可団体に無免許の支援員が自閉症児の面倒をみるのはおかしいと監査にのりだし…
【感想】
フランスというと人権や福祉という印象があるのですが、障害者への対応はひどいもの。重症者はクスリ漬けで施設に拘禁されます。また、自立してもらうために就職先を探そうとしても、どこにも相手にされません。ブリュノがいなければ、障害児も保護者も行き場をなくしてしまうところでした。
それでも、ブリュノは常に前向きです。周囲の人から女性を紹介してもらってせっかくデートにいっても、子供がトラブルを起こして呼び戻されてしますのはお約束ですが、子供のためにすべてを尽くしていることがよくわかります。一方、マリクも社会から見捨てられた青少年のために時には優しく、時には厳しく指導していきます。そして、介助人となった青少年も、自閉症児の面倒をみることで自ら成長していきます。
自閉症児のなかには性的な関心をもってしまう子どもいるし、普通の人がそこまで配慮するのは大変です。だから、ブリュノはうまくいかなくても、相手を責めることはない。こまったような笑顔をみせるだけ。でも、決してあきらめない彼の姿が、周囲の人を引っ張るというリーダー的な姿をみせてくれます。
正直、国すらも重度の自閉症児のことを放置しています。まだ、日本のほうがましのようにみえてしまう。だから、ブリュノは国と戦うのではなく、社会そのものにどうやって受け入れさせるかの生き残りを戦っているのです。巨悪をやっつける爽快感があるわけではないですが、人間のやさしさ、そして真の強さとは何かというのをわからせてくれる良質な作品でした。
【2020年に見た映画の最新記事】