2020年10月19日

生きちゃった

 「舟を編む」で日本アカデミー賞を受賞した石井裕也監督が香港国際映画祭の企画で「至上の愛」をテーマでアジアの6監督と競作した一本。大島優子の熱演はみどころだし、中国資本なので石井監督がスポンサーなどに忖度せず、自由に作れた分、こちらが置いてけぼりになったような側面も。

  作品情報 2020年日本映画 監督:石井裕也 出演:仲野太賀、大島優子、若葉竜也 上映時間91分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷ユーロスペース 2020年劇場鑑賞213本



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 【ストーリー】
 厚久(仲野太賀)と武田(若葉竜也)は親友同士。高校時代からともに奈津美(大島優子)のことが好きだった。大人になり、厚久と奈津美は結婚し、鈴(太田結乃)という娘が生まれたが、3人の友情は続いていた。

 ところが、ある日厚久が会社を早退して帰宅すると奈津美が見知らぬ男洋介(毎熊克哉)とベッドで抱き合っていた。ショックで心を閉ざしてしまった厚久に奈津美は追い打ちをかけるような言葉を告げる…

 【感想】
 至上の愛という意味がいろいろにとれます。厚久の奈津美への愛はまさしくそうだったのだけど、もとから不器用で自分の気持ちを伝えるのが苦手だった彼は、ショックを受けてますます口下手になりました。もっと、うまく気持ちをいえたらよかったのにという点もありますが、本当はそういう部分も含めて、厚久という人間になっているのですよね。

 一方、奈津美の気持ちは分かりにくい。至上の愛を求めたせいで、自分が満足できずに空回りしてしまったというべきでしょか。それだったら至上の愛というのは必要なのかよくわからなくなります。それを求めた故に、自分で何が正しいのか分からなくなり、へんなものに執着してしまう。その人間の弱さもよく描かれています。

 一番分からないのが武田の気持ちです。奈津美への秘めた思いというのも、厚久との友情というのも至上の愛というのとはちょっと違った感じです。むしろ、2人の悲喜劇を俯瞰的にみられる触媒というのでしょうか、物語に必要なんだけど、でも主人公になりえない。そんな人間は確かにいるのですが、感情をなかなか表さないだけに、武田が何を考えているのかよくわからない。

 そんな3人を取り巻く人たちは幼い鈴を除いては、ちょっとアブノーマルな人ばかり。奈津美のエピソードはある種類型的だと思いきや、厚久の家族(嶋田久作、伊佐山ひろ子、パク・ジョンボム)や洋介のちょっと変なところから、ますますドツボにはまっていきます。このへんは役者の熱演の一方、脚本も手掛けた石井監督が独走した感じもあり、個人的にはのりきれませんでした。

 太賀と若葉が役柄から抑えめの演技をしている分、大島が体当たりの熱演を繰り広げており、脱アイドルともいえるような意欲が伝わってきます。はたから見れば喜劇だけど、本人にとっては悲劇ともいえる奈津美の空回りぶりを見事に体現していました。出番は少ないけど重要な役割になる、厚久の元恋人役に柳生みゆが起用されており、巧い配役だったなあ。
posted by 映画好きパパ at 07:31 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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