2020年10月21日

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ

 サンダンス映画祭で監督賞と審査員特別賞を受賞するなど評価は高いのですが、アメリカの現在の状況が実感できないので、ちょっとぴんと来なかったかな。

 作品情報 2019年アメリカ映画 監督:ジョー・タルボット 出演:ジミー・フェイルズ、ジョナサン・メジャース、ティチーナ・アーノルド 上映時間120分 評価★★★(五段階) 観賞場所:ブルク13 2020年劇場鑑賞216本



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 【ストーリー】
 サンフランシスコに住む黒人青年のジミー(ジミー・フェイルズ)は友人のモント(ジョナサン・メジャース)とともに、高級住宅街のフィルモア地区にある一軒の家の押し掛け掃除をしており、住民からうっとうしがられていた。

 実はこの家は「サンフランシスコで最初の黒人」と呼ばれたジミーの祖父が自らの手で建てたもの。ジミーの子どものころの家族の思い出が詰まっていた。その家が遺産トラブルで売りに出されることになり、一時的に空き家になることを知り…

 【感想】
 サンフランシスコはIT企業の高収入の社員らがたくさん住むようになり、家賃が高騰。年収1000万円でも貧困層になるほどです。その結果、家賃を払えなくなった旧来からの住民は外部へ追い出されることになり、大変な格差がでています。本作の主人公であるジミー・フェイルズの体験をもとにしており、役名も一緒なのですが、かれのような普通の黒人はとても市街に住むことはできません。

 幼いころの思い出やコミュニティを壊されることの哀しさというのがこの映画の主題であり、同時に白人よりも黒人のほうが収入が低い層が多いわけですし、フィルモア街の白人住民が黒人を蔑視するようなセリフもあるわけで、そのへんはまさに今のアメリカの縮図を表した形になっています。もっとも、リベラル派の多いIT企業の高給取りが貧困層を追い出すというのは皮肉な構図ですが。

 そして、貧困で何もない黒人たちが「サンフランシスコで最初の黒人」と名乗って、家を先祖が自らの手で建てたことを自慢しているのも、人間らしい哀しさです。ほかに自慢するものがなければ、先祖を自慢するしかないわけですから。ジミーはまだ先祖自慢があるわけですけど、何もない周囲の黒人たちは結局、その日暮らしでプライドもなく喧嘩や麻薬、酒といったものに溺れていくというのがまた哀しい。

 ただ、劇中にちょっとしか言及されていませんが、もともとこの地区は日系人が多く住んでいたのが、第二次大戦中に強制収容所においたてられ、余った土地を黒人を安く買えたわけです。いわば盛者必衰の理というべきか。それだったら、金持ちの白人に貧しい黒人が追い立てられるのも、また歴史の流れかもしれません。

 それをどこまで許容できるのか。アメリカのBLMの騒動をみても、なかなか解決策が出ないと思っています。
posted by 映画好きパパ at 07:00 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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