作品情報 2018年中国映画 監督:ウェン・ムーイエ 出演:シュー・ジェン、ジョウ・イーウェイ、ワン・チュエンジュン 上映時間117分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネプレックス平塚 2020年劇場鑑賞218本
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【ストーリー】
上海でインド製の回春剤を販売しているチョン・ヨン(シュー・ジェン)は家賃を払えないほど困窮しており、嫁には逃げられ、老父の介護もかかえていた。そこへ、白血病患者のリュ・ショウイー(ワン・チュエンジュン)が、インドから薬を密輸してくれないかと依頼に来る。
白血病の薬はスイスの製薬会社の製品しかなくそれは庶民には手の届かない高価なものだった。ところが、インドではその10分の1の値段のジェネリック医薬品が作られているというのだ。最初は断ったチョンだが、金に目がくらみ密輸を引き受ける。白血病の幼い娘を持ち、ネットの白血病掲示板の管理人のリウ・スーフェイ(タン・ジュオ)、英語ができる老神父リウ(ヤン・シンミン)、薬代がないため薬を強奪しようとした不良少年ボン・ハオ(チャン・ユー)が仲間になり、密輸薬は大評判になる。一方、上海警察は密輸薬の取り締まりに乗り出し、ツァオ・ビン刑事(ジョウ・イーウェイ)が担当になる。実はビン刑事はチョンの元義弟で…
【感想】
最初は金にくらんだチョンが、試行錯誤をして密輸に取り組むというクライムムービーと思いきや、次第に白血病患者の悲惨な状況をみて、心が揺れていきます。金儲け主義の正規代理店は薬価を下げようとせず、貧乏人は薬を買えないし、最初は買えても家を売り払ったり、破産した人も大勢でていました。しかし、それよりはるかに安い値段でジェネリック薬が手に入るのですから、多くの患者がチョンに感謝することになります。
多くの人間の心にはどこか優しい部分があるのでしょう。チョンも他人から感謝されたり、あるいは悲惨な境遇の人を見るに見かねて次第に心変わりしていきます。シングルマザーのリウについても最初は色目をつかっていたのに、病気に苦しむ彼女の幼い娘をみてとたんに、シャンとするようになりました。一方で、正規代理店やそこから圧力を受けた警察、偽薬をうりつけようとする詐欺師のように人情がわからない人がいるのも事実です。
ビン刑事も苦悩します。警察は法律を破った犯罪者を逮捕しなければなりません。しかし、犯罪者を逮捕することで命を失う人が大勢でてしまったらどうするのか。それは本来の正義の在り方と違うのではないか。日本よりもはるかに統制の厳しい中国ですから、余計、その思いは強いでしょう。
一方で、辛気臭い話にしなかったのが、中国で500億円をこえる大ヒットした要因でしょう。チョンは義賊のようなところがありますし、偽薬を販売している悪徳商人に殴り込んだり、リウの仕事はボールダンサーでセクシーなポーズで踊ったりと飽きさせることはありません。さらに、白血病という重い病気がテーマで、悲しい別れも描かれています。そしてラストは感動にみちています。
重たいセリフが「この世の病はただ一つ、貧しさだ」というもの。共産主義国なのに中国の貧富の格差は日本より激しい。一方で、検閲されている国だけあり、事実をもとにしていて現在では政府がジェネリック医薬品を認めて白血病の生存率も高まったという政府批判は避けています。エンタメと社会派を両立させ、しかも中国という統制国家で上演できた制作陣はすごいのひとことです。
【2020年に見た映画の最新記事】
製薬に携わるものとしては、この書き方は気になりました。薬価が何故高いかと言えば、それは莫大な臨床開発費を賄うため。そして他社がそのタダ乗りできないように、特許でガチガチに守るのが、製薬業界のビジネスモデルです。
自分達が必死に研究開発して、申請試験を乗り越えて、各国の当局とやりあって国ごとに認可ももらって、安定した供給体制を整えて、ようやく販売した薬(それもその時点で特許期間なんて数年しか残ってない)を、ルールに則って正規の対価で売ることを「金儲け主義」と言うのは、ちょっと…、じゃあ「可愛そうな人たちのために安売りしろ極悪人、もちろん供給体制も安全性はお前たちが責任持て」と言うのもなかなか…
映画を見てみないと、どんな風に描かれているのかも分かりませんが。医療・医薬関連のフィクションは特に皆さん色々と気をつけて見てくれると嬉しいな、と普段から思ってます。
確かに製薬会社の研究が大変で薬価があるというのも事実でしょう。
ただ、映画の中国の代理店は薬が買えない貧乏人たちを暴力的に
排除するなど金儲け主義と描かれています。
日本とは健康保険の制度や高額医療費の制度が違うので、日本では
このような事態は起きないでしょう。あくまでも中国映画の世界の中です。