2020年11月03日

パピチャ 未来へのランウェイ

 1990年代のアルジェリアを舞台に、西洋文化が好きなのにイスラム原理主義に圧迫される若い女性たちをいきいきと描きました。女性の強さと弱さ、抑圧された社会のひどさをじっくり見せられ、クライマックスに驚愕。20年以上たっても世界は変わっておらず、現代性もあります。今年の洋画ではトップクラスによかったです

 作品情報 2019年フランス、アルジェリア、ベルギー、カタール映画 監督:ムニア・メドゥール 出演:リナ・クードリ、シリン・ブティラ、 アミラ・イルダ・ドゥアウダ 上映時間109分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2020年劇場鑑賞228本



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 【ストーリー】
 1990年代のアルジェリア。女子大生のネジュマ(リナ・クードリ)はファッションデザイナーになるのが夢。夜にひそかに寮を抜け出しクラブへ行き、自作の洋服を仲間に売っている。だが、町はイスラム過激派のテロが相次ぎ、へジャブを着ていない女性は白眼視される。

 だが、彼女はそうした風潮に反発。周囲の嫌がらせに負けず、西洋風の服を作り続けていた。ある日、ショッキングな事件に遭遇したのをきっかけに、ネジュマは大学でファッションショーを開き、女性の自由と未来を訴えようとする。しかし、次々と障害が起き…

 【感想】
 僕もしりませんでしたが、1990年代のアルジェリアはイスラム過激派により内戦状態に陥っていたそう。まだ幼かったクードリ監督も一家そろって国外に脱出しました。その彼女の故国への思いが根底にあり、何ともたまりません。

 イスラム原理主義者の力が強かったとはいえ、夜のクラブでは若い男女が欧米の音楽に合わせてガンガン踊り、派手な色のドレスを着ていました。若者たち、特にへジャブを強制される女性にとっては、自由に服を着られて、好きに音楽を聞けるというのは自由の象徴だったわけです。性的なことは厳しいとはいえ、恋もありました。パピチャとは愉快で魅力的で自由な女性を意味するアルジェリアのスラング。パピチャたちの生き生きとした青春は日本とも代わりはありせん。

 そんなネジュマたちに文句をいうのは、過激派の男たちだけではありません。過激派に同調するへジャブをかぶった女性たちが詰め寄ってくることもあります。さらに、ネジュマの親友、ワシラ(シリン・ブティラ)は運命の恋だと思った男によって、どんどん地味な格好にさせられ、いうことをきかないと暴力を受けます。ネジュマもなじみの洋品店主から、女は家に閉じこもって男の家族のいうことに従え、といわれます。

 周りが敵だらけの中、寄り添うことしかできない若い女性たち。けれども、ネジュマは決して屈せず、あらゆる手段を使って対抗しようとします。その象徴がファッションショーの開催でした。文字通り命がけでそこにむかっていく彼女たちのがんばりには胸が熱くなります。僕からすると、そこまで意地にならなくてもと思う場面もあったし、はしゃぎすぎにみえるところもあったけど、こんな状況ではなまっちょろいことはいえないのでしょう。

 クライマックスについては、驚愕としかいいようがありません。こういうラストがいいのかどうかは意見がわかれるでしょう。ただ、本作品はアカデミー賞外国語映画部門のアルジェリア代表に選定されたにもかかわらず、本国では上映禁止になりました。つまり、今もなお本作のような若い女性は好ましくないと思われているわけです。さらに、過激な宗教原理主義者や女性差別の問題は今なお世界の大きな課題です。そうしたなか、本作はまさに今見るべき作品といえるでしょう。
posted by 映画好きパパ at 07:28 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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