2020年11月04日

罪の声

 1984年のグリコ森永事件をモチーフに、野木亜起子脚本は泣かせどころ、スピードともにうまく、配役も見事。グリ森事件をしっていれば余計興味がもてます。でも、新聞記者が格好良すぎるのには笑いました。

 作品情報 2020年日本映画 監督:土井裕泰 出演:小栗旬、星野源、 市川実日子 上映時間142分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマみなとみらい 2020年劇場鑑賞230本 



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 【ストーリー】

 京都のテイラー、曽根俊也(星野源)は自宅を整理していた時、押し入れから古いテープと手帖を発見する。テープを再生すると、幼いころの自分の声が聞こえてきたがなんと1984年に世間を騒がれた未解決事件、ギン萬事件の犯行声明で使われたものだったのだ。手帖は叔父の曽根達雄(宇崎竜童)のものであり、まだ何も知らなかった子どもの俊也はしらずに犯行に協力していたのだ。

 そのころ、大日新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は、ギン萬事件の取材チームの一員として事件を追っていた。やがて、阿久津は曽根の存在を探り当てる。そして、曽根のもとを訪ねるのだったが…

 【感想】 
 昭和最大の未解決事件とよばれるグリコ森永事件。グリコの社長が誘拐されたあと、犯人グループはグリコや森永などの菓子に青酸化合物を混入して店頭に置き、メーカーを脅迫しました。同時にマスコミに犯行予告を送り付け警察をおちょくったことから、世間は大騒ぎになりました。そのうち、身代金の受け渡し場所を指定するテープが子供の声のものだったことも騒ぎを大きくした一因です。

 映画はメーカー名こそ架空ですが、事件の経緯は現実のものと酷似しています。そのうち、子供の声は3本あり、その3人の運命に焦点を絞ったというのは面白い着眼点です。曽根は自分も妻( 市川実日子)と幼い子供を持ちささやかな幸せを得ています。しかし、記憶の奥に封印されていたことを思い出し、このままでいいのかと罪の意識をもちつつ、真相を探りに行きます。

 一方、阿久津は新聞記者としてはぐうたらなほうで、今更昭和の事件を再取材する意義を感じません。当時、取材にあたってOBの水島(松重豊)やスクープを得ようと躍起になる上司の鳥居(古舘寛治)とはえらい違いでした。その阿久津の今風の報道のありかたを悩みつつ、でもしだいに取材にはまっていく様子も、またテレビや映画にでてくるステレオタイプの新聞記者とは違って人間らしい。

 そして、35年たった今だからこそ話せる証言者が次々とでてきます。警察が威信をかけて捜査したのにみつからず、今更こんな証言、証拠がぽんぽんでてくるというのはいかにもフィクションなのですが、野木脚本は罪の意識に悩む曽根、メディアのあり方に悩む鳥居など、血肉のついた登場人物を多くだしていることにより、フィクションくささよりも、人間の業の深さ、運命の残酷さのようなものを浮き彫りにさせます。

 星野はこういう巻き込まれがたの主人公にはうってつけで、彼のこまった顔やそれでも前へ向こうという姿はよくあっていました。小栗も等身大の青年をきちんと演じており、この二人のコンビがなかなか心地よい。京都をめぐる軽口などをたたく一方、相手の悩みにしっかり向き合っているよさが、大人の友情を感じさせました。さらに、星野を支える妻役の市川も控えめだけど芯の強い女性になっておりこのへんは野木・TBS作品の常連がうまくでています。

 さらに、原菜乃華、阿部純子の2人がいかにも印象的な役柄ででてきます。若手女優のつかいかたもいいですが、大ベテランの梶芽衣子をいかにもの役につかっているのも面白かった。土井監督はテレビ畑だけにそれほど驚かされる演出はありませんが、手堅くまとめていました。昭和の風景と令和の風景、それぞれを味わえる秀作です。
posted by 映画好きパパ at 07:00 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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