作品情報 2018年イギリス、アイルランド、フランス、アイスランド映画 監督: P・B・シェムラン 出演:メル・ギブソン、ショーン・ペン、ナタリー・ドーマー 上映時間124分 評価★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2020年劇場鑑賞234本
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【ストーリー】
19世紀後半、南北戦争のPTSDから精神分裂症を発症した元軍医のウィリアム・マイナー(ショーン・ペン)はイギリスに移り住むが、そこで自分が襲われるとの妄想に取りつかれ、殺人を犯し精神病院に収容される。
一方、独学ながら言語学の天才のジェームズ・マレー(メル・ギブソン)は、オックスフォード大学が計画していた英語辞書の編纂責任者を任される。人でも金もないなか、マレーは一般の人から言葉がどのように使われているかの実例を集めるという奇想天外なアイデアを打ち出す。精神病院の中で時間がありあまっていたマイナーもこのことを知り、院内から千件以上も引用例を送り、マレーの仕事は大きくすすんだ。一方、夫のジョージ(ショーン・ノーン)がマイナーに殺され未亡人となったイライザ・ミレット(ナタリー・ドーマー)にマイナーは謝罪の手紙と自分の年金を贈る。最初は断っていたイライザだが、徐々にマイナーのことを信頼するようになり…
【感想】
マレーとマイナーの辞書作りへの熱情と友情に絞ればよかったのに、イライザとマイナーの関係が入ってくるもんだから、どちらも中途半端になってしまいました。どこまで史実なのかわかりませんが、夫を殺され子供が6人もいて途方にくれていたのが、いくら生活費を援助されたとはいえ、夫の敵と愛情を結ぶようになる過程が不明瞭。そりゃ子供じゃなくても怒るわ。
それというのも、時間の経過がどのくらいかわからないのが大きい。マレーが辞書を作り始め、マイナーが精神病院に強制収容されてから何年たったのか。チャーチルがちらっとでてきますが、その場面は史実のチャーチルの年齢から考えると1910年です。一方、マレーが辞書の責任者に任命されたのが1879年ですから、その間30年はたっているのです。でも、映画でみるとせいぜい、1、2年しかたっているようにみえません。だから、イライザとマイナーもじっくり時間をかけて和解が愛情に変わっていく描写があればわかるのに、突然、心がよろめいたようにしかみえないのです。
辞書作りについては邦画で「舟を編む」がありましたが、そちらのほうが、時間の経過もかいており、よほど納得できました。だいたい、メル・ギブソンもショーン・ペンも最初からひげだらけの老けた老人という恰好なので、劇中で30年以上たっても、全然、メーキャップも衣装もかわっていないのですよね。だから、辞書作りの大変さが伝わってこない。
劇中にも突っ込みがありますけど、すべての英語の言葉を集めるといいながらAMERICAとか、重要な言葉が入っていない。artの使用例を集めるのが大変という場面が描かれていたけど、それだったらもっと難しい単語はもっとたいへんなわけで、このへんの整理もうまくできていなかったようです。
それでも19世紀イギリスの雰囲気は美しさも汚さも含めてよく再現されていました。エンディングの美しいクラシック調の曲を含めて、格式を感じるような風格はなかなかのものでした。
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