2020年11月11日

彼女は踊る夢を見る

 ストリップ版ニューシネマ・パラダイス。加藤雅也の枯れた哀愁の演技が、滅びゆくものの切なさと幻影を見事に映し出す大人の映画。実に見ごたえがありました。

 作品情報 2019年日本映画 監督: 時川英之 出演:加藤雅也、犬飼貴丈、岡村いずみ 上映時間95分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2020年劇場鑑賞236本



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 【ストーリー】
 広島の町の名物となっていたストリップ劇場の広島第一劇場。昭和のころは人気を誇ったが、ストリップも時代遅れとなり、赤字と老朽化のため閉館が決まった。社長の木下(加藤雅也)は、自分の若き日を思い出していた。

 失恋でやけ酒していた若き木下(犬飼貴丈)はサラ(岡村いずみ)という若いストリッパーと意気投合する。翌日、彼女の舞台を見に行った木下はストリップに魅せられ、そのまま広島第一劇場で働くことになったのだ。ふと気づいた木下の前に最終公演に出演するストリッパー、メロディ(岡村いずみ)がやってきた。サラそっくりの彼女に、木下は息をのんだ…

 【感想】
 ストリップ劇場に行ったことはないので、どのへんまで現実に近いのかわかりません。でも、イメージしていたエロさむきだしではなく、木下の回想ということもあって非常に幻想的で美しい。ステージのうえで回るミラーボールの下でのダンスもそうですし、海辺でのダンスもそうですが、ただただうっとりとみとれてしまいます。

 一方、人生の終わりが見えてきた年の木下だからこその味わいがみれます。前科6犯で町の名物オヤジになる一方、劇場の閉館もせまり、投げやりに見えるような毎日を送っています。しかし、若いころは違っていました。飲み屋で知り合ったストリッパーに惚れてストリップ小屋に働くようになり、従業員が踊り子に手を出すのは禁止といわれると、サラの裸を見なくなる純情さ。

 また、大勢の客で賑わい、週替わりでさまざまな踊り子がきてさまざまなトラブルが起きます。それは面倒で大変な日々ですが、充実した毎日ともいえました。現在の木下はそのころの甘さが残っているからこそ、お話として胸を打つ。ビジネスライクにあきらめるのではなく、若き日の恋を含めてストリップへの思いが枯れていないわけです。でも時代の流れの前には無力でしかない。劇場の壁に残されたキスマークの数々をみても、思い出の美しさがいかに価値があるのか、観客に実感させてくれます。

 加藤雅也は中年になっても二枚目や冷徹な悪役という役どころが多かったのですが、本作ではぼさぼさの髪によれよれの服で、人生負け組オーラがすごい。だからこそ、かつての栄光がなくなった人のもののあわれが伝わってきます。彼がレディオヘッドの音楽にあわせて、何とも珍妙な踊りをする場面は、同世代の役者でも彼こそ見事に演じられる人はいないと思わされます。

 また、岡村はストリッパーの役を演じているにもかかわらず、踊りの妖艶さはたまりません。最終公演のメイン踊り子役の矢沢ようこが本職でしたが、それにひけをとらない。劇中、ストリップに女性の観客も多かったのですが、それもわかる美しさでした。ノスタルジーにどっぷりとひたれます。
posted by 映画好きパパ at 07:00 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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