2020年11月19日

さくら

 幸せな家族の転落と再生の物語。矢崎仁司監督の演出と若手からベテランまで魅力的な俳優の演技にひきつけられましたが、なんといっても、さくら役の犬がよかった。

 作品情報 2020年日本映画 監督:矢崎仁司 出演:北村匠海、小松菜奈、永瀬正敏 上映時間119分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズららぽーと横浜 2020年劇場鑑賞244本



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村



 【ストーリー】
 家出していた父の長谷川昭夫(永瀬正敏)が2年ぶりに家に帰ってきたため、次男の薫(北村匠海)も久々に家に帰ってきた。母のつぼみ(寺島しのぶ)、妹の美貴(小松菜奈)、それに飼い犬のさくらも以前と変わらず薫を迎えてくれた。

 働き者の父親としっかり者の母親。そして、仲良し3兄妹と庭付きの家に飼い犬。絵にかいたような幸せな長谷川一家だったが、家族からも周囲からも信頼されていた長男の一(吉沢亮)をめぐって、一家は日常の幸せから転落していく…

 【感想】
 陰キャの北村とメンヘラの小松という、まさに水を得た魚のような役柄で物語を回していく2人がいきいきと演じていました。特に小松は心身ともに壊れそうなところからでる色気が半端なく、すごみすら感じさせます。そこへベテラン永瀬と寺島がしめるところはしめ、吉沢が王子様のような感じで、見ごたえのある家族映画に。何よりも犬の演技がすごくて、食卓の下に寝そべっているのに、何かあるとすっくと動いたり、すごい自然な演技。動物に勝てないといわれるのもよくわかります。

 幸せな家族でもどこかに歪みはあります。今までが順調に行き過ぎていた分、その歪みが拡大、爆発してしまうと手が付けられなくなる。そんなことはいつどの家族にも起きそうで、不安にさせられます。物語は北村のモノローグ、回想を多用し、時系列を入れ子のようにしているため、余計、幸せだった過去と困難に直面する現在の対比をせまられ、そうなったときの家族の絆とは何なのかということを考えさせられます。

 もう一つ、「普通でない」ことをどう感じさせるかもうまかった。昭夫の親友の溝口(加藤雅也)はトランスジェンダーの女性です。文武両道、完璧にみえた一が相談していたのは溝口でした。また、一には矢島(水谷果穂)という恋人ができますが、彼女はDV被害を受けています。その彼女をめぐる長谷川家の面々の距離感というのもなかなか奥深い。時代をあえて今世紀初頭ぐらいにしていることで、現代とも違う感覚が奥行の深いものにしています。

 この加藤も最初は誰だかわからなかったほど役になり切っており、先日見たばかりの「彼女は夢で踊る」に引き続き、もはや演技派俳優の第一人者といってもいいほど。脇役にいたるまでしっかりとした演技がみられるという点でも貴重な作品でした。
posted by 映画好きパパ at 06:54 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。