2020年12月19日

燃ゆる女の肖像

 18世紀の抑圧された女性同士の恋愛を、美しく静かに映像化しました。どの画面からも濃厚な美がただよってきますが、ストーリー自体はこんなものかという感じなので、内容よりも美を楽しむタイプといえるかも。

 作品情報 2019年フランス映画 監督:セリーヌ・シアマ 出演:ノエミ・メルラン、アデル・エネル、ヴァレリア・ゴリノ 上映時間:122分 評価★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2020年劇場鑑賞276本



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 【ストーリー】
 18世紀のフランス、ブルターニュの孤島に住む伯爵夫人(ヴァレリア・ゴリノ)の依頼を受けて、女流画家のマリアンヌ(ノエミ・メルラン)は島に渡った。伯爵夫人の娘のエロイーズ(アデル・エネル)の縁談のために肖像画を描いてほしいが、結婚を嫌うエロイーズには画家であることを秘密にしてほしいとの依頼だった。

 そこで、マリアンヌは画家であることを隠して、エロイーズの散歩に付き合いながら、ひそかに肖像画を描くようになる。やがて伯爵夫人は泊りがけの所要で館を不在にすることになり…

 【感想】
 伯爵夫人が前半で島から去るので、マリアンヌとエロイーズ、それにメイドのソフィー(ルアナ・バイラミ)の3人の濃密な人間関係が続くことになります。立場や身分の差を超えた女としての関係。夜になると闇のとばりがおりるなか、それぞれの心情がいっそう濃く妖しくうつっていきます。

 画家ですら男性の名前を名乗らないと売れなかった時代。そんななか、最初は画家であることを隠してエロイーズの肖像画を完成させたマリアンヌですが、その絵は表面的にしか描かれておらず、満足のいくものではありませんでした。真実と心の交わりが必要だったというのは、いつの時代でもそうなのかもしれません。

 そして、2人の関係はさらに深まっていくのですが、時代が時代なだけにそれはひと時の夢のようなものでした。2人がビバルディの曲をピアノで連弾する場面があるように、女性監督らしく本当に、美しくきれいな描写が続きます。そして全体的に寒々とした、黒っぽい色彩が多いカメラワークがゆえに、その美しさは際立ちます。またBGMもなく、ビバルディや島の女性たちが歌うアカペラが時代性とともに、やはり印象に残ります。ギリシア神話のオルフェの物語が劇中で話題になりますが、芸術と美と愛、そういったものを追求した作品になっています。

 ただ、ストーリーとしては美しいけど、展開に驚きはなくさもありなんという感じを受けました。男性に隷属するしかなかった時代だからこそ、制限された女性たちに美しいとすら思えてしまいましたけど、はたしてどうなのでしょうかね。フランス映画らしい直球の恋愛映画はやはりちょっと苦手かも。
posted by 映画好きパパ at 07:18 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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