作品情報 2019年日本映画 監督:草場尚也 出演:高山璃子、松川星、芝崎唯奈 上映時間:97分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:横浜シネマリン 2020年劇場鑑賞283本
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【ストーリー】
売れない役者でエキストラばかりのミキ(高山璃子)は目立つために芸名をミキンコリニスタとして、撮影現場でも大げさな演技をするが失敗ばかり。でもめげない彼女は新人エキストラで舞台女優のヒトミ(松川星)に先輩づらして名言をはき、仲良くなる。
しかし、現実は厳しい。現場での空回りで所属事務所を首になったミキは奨学金の返済もできない。長崎の実家にいる母(櫻井美代子)からは仕送りをもらえず、地元に戻って公務員になるようにいわれる。さらに嫌になることばかりが続くが、それでもミキは…
【感想】
自分に絶対的な自信があって大言壮語をして、弱い者にはえらそう。最初はミキはちょっと勘違い女というふうに登場します。彼女の現場での空回りぶりはこっけいだし、そばにいたら迷惑です。けれども、それはエキストラという下積みのなか、必死でもがく彼女が演じている表層にすぎないことが次第にわかっています。
芸能界で夢をかなえられるのはごくごくわずか。そんな現実をしりつつ、25歳でも夢にしがみつつミキの必死さに、見ているこちらは次第に共感していきます。そして、ミキが実は優しいし、一見ちゃらけているようにみえて仕事にも真剣に向き合うことが次第にわかってくると、スクリーンにむかって「がんばれー」と声援を送りたくなるほど。
また、撮影は貧困が激しくなるコロナの前ですが、それでも豊かといわれる日本でも地方から出てきた女性が生きていく困難さがさりげなく描かれているのがいい。母からは東京の大学まで出してといわれますが、奨学金の返済もままならない。貧困に陥るギリギリのところで踏みとどまっている。それでも地元の平凡な閉鎖的な毎日よりも、何とかして夢にしがみつきたい様子は、若いからこそできるでしょうし、現実がそんなにうまくいかないことも含めてビターな切なさを観客に伝えてきます。
一方、ヒトミをはじめミキには応援してくれる人が周りにいます。なかにはそれに漬け込んでひどいことをしようとする輩もでてくるけど、それでも一人ではない。まあ、エキストラなのにツイッターのフォロワーが4桁もあるのだから、そうしたつながりを作るのがうまいのかもしれません。だからまだ救いもあるのですよね。
それにしても映画界にはパワハラが多いのには驚きました。またADが全部同じ俳優というのは、AD出身の草場尚也監督の分身ということなのかも。ノースターの作品ですが、高山を含めてそれだけにみな現実にいそうな感じで、笑って切なくさせる傑作でした。現在、夢にむかって頑張っている人はもちろん、毎日の生活に疲れたり、夢を忘れてしまった人にはぴったりの作品です。
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