2020年12月28日

声優夫婦の甘くない生活

 ソ連崩壊でイスラエルに移住したユダヤ人は多いそうで、エフゲニー・ルーマン監督も主演2人も実際に移住経験者だそう。映画愛にあふれた大人のちょっとほろ苦いラブコメです。

 作品情報 2019年イスラエル映画 監督:エフゲニー・ルーマン 出演:ヴラディミール・フリードマン、マリア・ベルキン、アレクサンデル・センデロヴィッチ 上映時間:88分 評価★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2020年劇場鑑賞288本


 【ストーリー】
 1990年、旧ソ連のベテラン声優ヴィクトル(ヴラディミール・フリードマン)とラヤ(マリア・ベルキン)はイスラエルに移住してきた。だが、声優の仕事はイスラエルになく困窮してしまう。

 ラヤが見つけた仕事は電話でHな声を出すテレフォンサービス。声優の特技をいかして40歳も年をごまかす彼女はたちまち人気を呼ぶ。一方、ヴィクトルはロシアからの移民向けに違法ビデオを販売するため、なんと映画泥棒に…

 【感想】
 ソ連やイスラエルの声優事情がどうだかしりませんが、ヴィクトルがハリウッド映画の名作やフェリーニの作品をすべて暗記しているのがすごい。それだけ、声優という仕事に自信と思いがあったのでしょう。しかし、年を取ったユダヤ人ということもあり、住みづらいソ連からイスラエルに移住したけれど、そこでも世間は厳しかった。

 過去にしがみつくヴィクトルと、最初はいかがわしいサービスと警戒しながら新生活になじんでいくラヤの対比が面白い。時代が時代だけに妻を愛しているとはいえ、亭主関白だったヴィクトルに、ラヤも内心不満がたまっていました。それがイスラエルという自由な国にくることで、ラヤも解放されたようになるのが面白い。そして、彼女との距離をうめようと不器用にもがくものの、かえってうまくいかないヴィクトルの哀れさも、ちょっとおかしさを感じます。

 また、イラクとの緊張が高まっていた時代風景もうまく利用しています。ソ連では感じられなかった戦争、空襲の脅威というものが日常生活を脅かします。そんななかで2人はどう対応していくのか、その違いもなかなか考えさせられます。そして、ラヤに訪れた思わぬ機会。人間いくつになっても、いいことも悪いこともあるのだなと実感させられます。

 ヴィクトルはフェリーニが大好きで、ソ連時代には上映禁止になるのをくいとめたというエピソードもあります。そのほか、マーロン・ブランドやダスティン・ホフマンといったハリウッドスターの吹き替えもやっており、ソ連でもこうした作品が流れていたというのも面白い。一方で、ヌードをみて、検閲があったほうがよかったという場面もあり、ニューシネマ・パラダイスでないですけれど、映画愛と世代の違いも面白かったです。
posted by 映画好きパパ at 06:56 | Comment(0) | 2020年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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