作品情報 2019年ハンガリー映画 監督:バルナバーシュ・トート 出演:カーロイ・ハイデュク、アビゲール・スーケ、マリ・ナギ 上映時間:88分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座 2020年劇場鑑賞291本
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【ストーリー】
1948年のハンガリー。ホロコーストで両親を失った16歳の少女クララ(アビゲール・スーケ)は、同じく家族を失った中年医師のアルド(カーロイ・ハイデュク)の診察を受けたことがきっかけで、彼を父親のように慕うようになる。
暮らしていた大叔母オルギ(マリ・ナギ)の家を飛び出して、家にきたクララに戸惑ったアルドだが、オルギの言葉もありもう一人の保護者として週の半分はクララの面倒をみるようになる。だが、周囲はそんな2人を奇異に思い…
【感想】
家族全員を殺されてこの世界に残されることは、どんなにつらいことなのでしょうか。クララもアルドも心に深い傷をおっていることがよくわかります。そんな2人が互いに触れ合うことで、心の傷を癒していくすがたは、何とも応援したくなります。
しかし、時間が経つにつれ2人は新しい道を歩き出さないといけません。いつまでも過去の傷をなめあっているわけにいかないからです。それに少女とはいえ16歳の女の子を自宅に出入りさせ、他人なのに親子のようにべたべたすることは、はたから見ればおかしなようにみえます。事情がわかっていれば別でしょうけど、いちいち説明なんてできないですし。結局、2人だけの世界に閉じこもったままというのは不可能なわけですが、あまりにも静謐なこの世界が壊されていくことにももどかしさを感じてしまいました。
さらに、ナチスがいなくなったあとソ連の圧制が始まります。共産主義下でもユダヤ人は良い扱いはされないですし、ちょっとでも反党的とみなされると迫害された時代。戦争が終わっても、心が落ち着く間もないということでしょうか。映画で取り上げた時代のあとにハンガリー紛争が起きるのを知っている現代の観客にとって、本当に2人がどうなるのかときにかかってやみません。
東欧の落ち着いたたたずまいに、演技も見ごたえがあります。当時の青春がどんなものかも垣間見え、美術、小道具も含めてしっとりと見ることができました。映画の中で前を向き始めた2人が本当に実在したようにも思え、いとおしくなる作品でした。
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