【ストーリー】
大手メーカーを退職して2年、ようやく家族とのんびりできると考えていた砂田知昭は、がんを宣告される。彼は家族のために、自分が死ぬまでにやっていくこと、死んだあとの指示などを書いたエンディングノートを書き始める。次女の麻美は、父親の最後の日々を淡々とカメラで追っていく。
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【感想】
不謹慎ながら、砂田氏はなんて幸せな死にかただったのだろうというのが率直な感想。大手企業で役員まで勤め、都心部に家を持つという成功した人生で、子供たちや孫たちからも慕われている。そして、がんで死期もわかり、最後まで体も意識もはっきりしている。無縁死や震災での突然死が溢れている現在、こうした死にかたができるというのは、それだけで幸せに思えてならない。
けれども、遺族にとってはああするべきだった、こうするべきだったと後悔ばかり。一方で、父親が死んでも葬式の準備をはじめ、やらなければならない雑事が山積する。当事者である娘だからこそ撮れた映像は、遺族の思いと日常も淡々と切り取り、初監督という麻美監督の非凡さがうかがえた。しかし、がんの宣告を受けた直後の映像とか、公開するというのは、父娘の信頼があるからこそできたからだろうか。こういう家族関係はうらやましい。
ナレーションを麻美自身がやり、しかも麻美の視点ではなく、父の視点で行うというのも斬新なアイデア。最初は、ちょっと違和感も感じたが、逆に男性のナレーションでやるよりも、みているこちらがちょっと客観的にみられることができ、納得できた。
それにしても、死の直前まで意識がはっきりしていること。家族に向ける言葉に、見ているこちらも目頭が熱くなってきた。その一方で、キリスト教に入信する理由がコストが安いからなど、意図せぬユーモアも入っており、見ていて飽きない。どんな人も一度はドラマになるというけれど、死という最大のイベントをこうして記録してもらい、いつまでも記憶に残るというのは、ただただすごいことですね。採点は7.5(ヒューマントラストシネマ渋谷)
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