【ストーリー】
オーストリアに住む平凡なサラリーマンのゲオルグ(ディーター・ベルナー)一家。休みの日には会社ではいやな上司を我慢しながら仕事をして、小学校の娘エヴァ(レニ・タンッアー)はクラスで浮いていて、とどこにでもありそうな家庭。ゲオルグと妻のアンナ(ブリジット・ドール)はこんな陰鬱な生活は投げだして、オーストラリアでも移住して理想の生活を送りたいと夢をみている。だが、それはしょせん夢物語。毎日、味気ないうつうつとした日々を送っていた一家は、次第にストレスをため、ついに・・・
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【感想】
前半3分の2は一家の日常が淡々と映し出される。毎朝、タイマー設定した朝のラジオニュースで目覚め、ドライブの途中で洗車にいき、熱帯魚に餌をあげたり、と同じような行動が繰り返し行われ、途中でオーストラリアのビーチの映像が印象的に入る。あまりにも淡々としているが、よくみると、次第に彼らの行動がおかしくなりはじめているのが分かる。
そして、終盤、突然スイッチが入ったように、物語は急転する。一家は家中を破壊し、写真や手紙を破り捨て、幼い娘を含めて、死んでいく。この破壊がすさまじい。カンヌでブーイングが起きたそうだが、家中のお金を破って、トイレの中に捨てていくシーンを延々と移す。特典映像でハネケ監督は「少女が死ぬことよりも、こちらの方の非難が多かった」と語るが、消費社会への徹底した皮肉だろうか。映画自体も近代への徹底的な嫌悪というものが感じられる。
ハネケらしい悪意ある視点で作品をとっているが、映画の中で、彼らがなぜ死を選んだのか、はっきりとした理由は描かれていない。実はこの映画は実際に起きた事件をモデルにしており、その事件でも動機が不明なのだ。ハネケは観客が自分でみつけなさいと、突き放している。そして、死すらも救いでない徹底した悪意。ざらざらとした嫌な感覚がみたあとに巻きおこってくる。
制作されたのは20年前だけど、こうした鬱屈感というのは、今のほうが強いかもしれません。結局生きること、死ぬことって両方ともつらいのね。タイトルのセブンスコンチネントは、第七の大陸=どこにもない場所という意味だそう。採点は7