【ストーリー】
トルストイ(クリストファー・プラマー)は晩年、私有財産や身分制を否定するトルストイ主義を打ち出していた。その理想に共感する青年ワレンチン(ジェームズ・マカヴォイ)は、トルストイの弟子チェルトコフ(ポール・ジアマッティ)を通じて、トルストイの秘書として送り込まれる。
自分の財産も否定しようとするトルストイに妻のソフィア(ヘレン・ミラン)は、激しく抵抗する。チェルトコフらトルストイ主義者は、ソフィアがトルストイの遺産を独占すれば、自分たちの運動はおしまいになる、と警戒する。やがて、50年も連れ添い、愛し合っていた2人の関係は徐々におかしくなっていく。
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【感想】
トルストイは何冊か読んだことがあるけど、妻との関係や晩年がどうなるかは知りませんでした。この映画の良さは、そういう、トルストイのことを知らない人でも十分に楽しめるように、ワレンチンという観客目線にたった人物を登場させていること。正直で、理想を追い求め、女性にはシャイというワレンチンは、観客に感情移入するにはうってつけ。さらに、トルストイのコミューンに参加していた美しき女性マーシャ(ケリー・コンドン)との恋愛もある。
トルストイ夫婦は、お互いの愛情が分かっており、長年連れ添った夫婦ならではの、ほほ笑ましいやりとりも多々ある。まるでラブコメかと思えるような場面も。しかし、財産や社会的地位、自分以外の人間の生活を考えなければならないなど、余計なことが多すぎて、結局、愛情を貫くことが出来ない。ワレンチンのような、若者の燃えるような純粋な恋と、対比が鮮やかだ。
ワレンチンの立場からすれば、チェルトコフにも、ソフィアにも、何よりトルストイに共感ができる。だからこそ、対立が深刻化していくと、観客同様、オタオタするまま、でも傍観の立場は崩せない。中でもソフィアの考え方についてはチェルトコフは理解、同情を示すものの、トルストイの秘書で彼を一番信頼している以上、ソフィアについていくことができない。その辺りの葛藤がかいま見えるのも味わい深かった。
クリストファー・プラマー、ヘレン・ミランのベテラン対決は見応えがあり、2人ともオスカー候補になったのはむべなるかな。その一方で、若いジェームズ・マカヴォイがしっかりと狂言回しが出来ており、役者の演技はいうことなし。当時の社会風俗、ファッション、ロシアの大地も忠実に再現しているようで、美しい映画でした。採点は7(TOHOシネマズシャンテ)。なお、エンディングロールとともに、実際のトルストイの映像も流れます。トルストイが亡くなったのは1910年で、100年前の映像があるというのも、ちょっと驚きでした。