2021年02月12日

彼女が消えた浜辺

 イラン映画というと、体制への批判や戦争もの、農村部の生活を子供の視点から描いた作品のイメージなんだけど、この作品は、イランのインテリ階級の普通の生活をミステリ仕立てで描いた作品。便利な生活、イスラムの戒律、そして洋の東西を問わない人間心理が混じり合い、ベルリン映画祭銀熊賞も納得のできでした。

 【ストーリー】
 大学時代の友人たちが、カスピ海沿いのリゾート地でバカンスを過ごすことになった。参加者のうち、エリ(タラネ・アリシュスティ)だけが部外者。実は、離婚したばかりのアーマド(シャハブ・ホセイニ)を気遣い、幹事のセピデー(ゴルシフテ・ファラハニ)が、自分の娘の保母で独身のエリを、旅行に誘ったのだ。セピデーら残りの男女は家族で参加しており、2人を結びつけようともり立てるが、エリは帰りたがっている様子だった。

 翌日、思いもつかないことが起きた。男性陣が外で遊び、女性陣が買い物に出かけているあいだ、一人で浜辺で遊んでいる間に幼い子供が海で溺れたのだ。幸い、救助されるけど、子供を見ているはずだったエリの姿が消えた。助けようとして溺れたのか、それとも、一足先に一人で帰ってしまったのか。彼女を捜しているうちに、セピデーは彼女の名字すら知らなかったことに気付く。





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 【感想】
 先日、妻の学生時代の友人宅で開かれたパーティーに子連れでいって、楽しんできたのだけど、みんなあだ名や下の名前でよびあっていて、僕は××ちゃんのだんなさん、とか呼ばれていて、多分、本名は覚えられてないのだろうなという経験がありました。まして、あだ名やファーストネームで呼ぶのが浸透している国では、こういうことは、おこり得るのだろうな、と実感しました。

 さて、映画が始まってまず驚いたのが、30代で、中の上ぐらいのランクのインテリ階級が、BMWに乗ったり、ヴィトンのバッグをもったりと、日本とたいして違わない豊かな暮らしをしていること。西洋文化には厳しい目を向けるイランでも、日常生活はたいしてかわらないのですね。また、テレビの「みつばちハッチ」が話題になっているのも、妙に親近感がわきました。

 まして、男女の戒律が厳しそうなのに、男女で泊まりがけで(もちろん部屋は別々だけど)集団旅行できるというのも、意外。もちろん、女性陣は頭をスカーフで覆っているし、水着に着替えたりしないのだけど。それが、エリが行方不明になってから、普段は気にしていなかったイスラムの戒律、未婚女性が見知らぬ男と旅行にいくのは許されない、というのが問題となってくる。

 そして、参加者たちが、些細な理由、面倒くさかったり、バツが悪かったりといったことで、小さな嘘をついており、それが事態をますます悪化させていく。そうなると、みんな責任を押しつけあうのに必死。仲良しだったはずの夫婦が大喧嘩したり、子供が泣き叫んだりと、うまくいっているときは何ら問題なかった欠点が、どんどんみえてきてしまうのだ。このあたりの小市民的感覚は実にリアル。

 BGMも少なくて淡々とした進行で、女性陣が美人だけど似た雰囲気なので区別が付きにくいという欠点もあったけれど、味わい深い作品でした。採点は7(ヒューマントラストシネマ有楽町)
posted by 映画好きパパ at 21:53 | Comment(0) | 2010年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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