2021年02月13日

オアシス

 イ・チャンドン監督、ソル・ギョングつながりで、「オアシス」をみました。本当に、イ・チャンドンの映画はすさまじいの一言。韓国を代表する作品といっても間違いないでしょう。

 【ストーリー】
 酔っぱらい運転で人を殺したジョンドゥ(ソル・ギョング)が刑務所から出てきた。だが、家族は幼いころから問題を起こしてばかりのジョンドゥに冷たくあたる。

 ジョンドゥは被害者の遺族のところに詫びに行くが、けんもほろろに追い返される。遺族の娘コンジュ(ムン・ソリ)は重度の脳性マヒでほとんど寝たきり。コンジュの兄のサンシク(ソン・ビョンホ)は障害者年金だけ受け取り、あとは一人で放置していた。ジョンドゥはコンジュに興味を持ち、抱き寄せようとするが・・・






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 【感想】
 日本でも障害者が主人公の恋愛ドラマはある。だが、ほとんどが目か耳が不自由だけど、外見は柴咲コウとか常盤貴子とか美人女優がそのまま演じている。けれども本作は、顔面がゆがみ、体がねじれ、言葉もろくにしゃべれない女性がヒロイン。世間の人は薄っぺらい同情心は持つけど、気持ち悪がってそばによろうとしない。ジョンドゥが車椅子を押してレストランにいけば、体よく、断られるし、自分の家族に紹介しようと連れていけば、普段、冷たくされていることへの嫌がらせか、と怒られる。ジョンドゥにとっては、外見ではなく、コンジュの美しい心にひかれているのだけど、周りの人はそうはみない。けれども、社会のメーンストリートからはみ出てしまい、つらい目にあっている二人は、そういう態度をとられても、解決する手段を見つけられない。いらだってものにあたって、余計、世間から冷たくされる。正直、ヒロインをこういう設定にしたというのはすさまじい。

 ジョンドゥの家族はひどいな、と思いつつ、でも、将来、自分の娘が重度の脳性マヒの人、あるいは、世間から偏見を持たれているような人と付き合っているといわれたとき、平静でいられるかは正直自信がない。この映画は、観客の心の奥底にあるようなドス黒い意識まで、さらしているよう。

 それでいて、純愛ストーリーとしても美しい。コンジュは体が動けない分、想像力が豊か。ジョンドゥが車いすを押しているときに、もし、自分が普通の女の子だったらと想像してしまう。一緒にカラオケに行ったり、電車で隣の席に座ったりと、世間ではあまりにも平凡なことなのに、それさえ手の届かない彼女にとって、たったそれだけがなんと美しい行為に見えることか。ダンスのシーンでは涙がでてきました。そして、クライマックスの神々しさは、すべての恋愛映画の中でも極めつけの出来、といえるでしょう。

 ムン・ソリはリハビリ施設で働いていたことがあり、役作りにいかしたそうだけど、撮影中はあまりにも無理な姿勢をとるので、1度に10分程度しか撮影できなかったそう。まさに、障害者になりきっていて、日本の作品のような、美人が障害者を演じてます、みたいなうそ臭さはどこにもなかった。イ・チャンドンの新作「ポエトリー」も早くみたい。採点は9
posted by 映画好きパパ at 21:26 | Comment(0) | DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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