【ストーリー】
幕末、日本は開国か攘夷か国論が二分していた。開国派の大老井伊直弼(伊武雅刀)は、攘夷派を徹底的に弾圧することで、幕府の権威を回復しようとする。攘夷派の筆頭、水戸藩は前藩主の徳川斉昭(北大路欣也)が謹慎させられたほか、家老、京都留守居役らが死刑となるなど、井伊に徹底的に攻撃される。
水戸藩士・関鉄之介(大沢たかお)らは、井伊大老を襲撃するとともに、薩摩藩と手を結び、挙兵して幕府の政治をただし、もう一度斉昭を政治の中心に戻そうとする。3月3日。水戸藩を脱藩した関らは、江戸城の桜田門外で井伊を襲撃した。
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【感想】(史実なのでネタバレです)
タイトルになっている桜田門外の変は序盤にもっていき、関がなぜこのような企てを起こしたかの回想と、事件後の関たちの運命に焦点をあてている。これにより、単に襲撃事件をゲーム的にとらえた作品ではなく、歴史や権力に翻弄される個人の悲劇、侍の意地とそれゆえ起きる窮屈さなどをあますところなく描いている。
強大に見える権力も、根っこが腐っていればあっけなく崩れてしまうということを桜田門外の変は示しており、わずか18人の浪士によって日本の歴史は変えられた。けれども、浪士たちはしょせん名もない下級武士。事変後は権力を守ろうとする水戸藩や薩摩藩に裏切られ、追われる身となってしまう。関は単なる攘夷派ではなく、黒船を実際にみたり、外国語を習おうとすると英邁なところがあるだけに、個人の力のむなしさが感じられる。さらに、関の愛妾だったため、捕まって拷問死する、いの(中村ゆり)、関の脱出を手助けしながらも役人に脅されて居場所を白状してしまう村人・与一(温水洋一)といった歴史のうずに巻き込まれていく庶民も何とも哀れ。もっといえば、井伊、斉昭といった権力者でさえ、時代の波には勝てず、消え去っていく。
エンターテイメントとして撮影すれば、関をヒーローにして、襲撃をクライマックスにしたろうに、映画は関だけでなく襲撃に加わった他の浪士の最後も一人一人描いていく。2時間17分あっても、これでは全然時間が足りず、他の浪士の描き方は舌足らずになってしまうのは佐藤監督も承知しているだろうが、やはり歴史を忠実に再現したかったのだろう。
大沢たかおが意外にもはまり役。特に、逃亡中、妻子(長谷川京子、加藤清史郎)が家を追い立てられているのを、遠めで無表情にながめる様子は、内心の衝撃ぶりをよくあらわしていた。また、出番はわずかながら、中村ゆりは、木村多江をしのぐ、不幸が似合う女優になりましたね。このほか、北大路、伊武、柄本明、生瀬勝久といったベテラン勢もいい。あとは長谷きょーと子供店長で、いかにも芝居っぽくみえたけど、全体が淡々としている分、アクセントになったかも。採点は7(TOHOシネマズららぽーと横浜)