【ストーリー】
昭和40年代、ワタナベ(松山ケンイチ)は親友のキヅキ(高良健吾)に自殺され、喪失感を抱えたまま故郷を捨て、東京の大学に進学する。偶然、キヅキの恋人だった直子(菊地凛子)に再会したワタナベは、彼女と一夜をともにするが、彼女は姿を消してしまう。
そんな彼は同級生の緑(水原希子)とつかず離れずの関係を繰り返す。一方、直子が心のバランスを失って療養所に入院したと聞いたワタナベは、療養所のある京都の山奥へ向かう。
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【感想】
村上春樹の原作は2度読んだはずなのだけど、特殊なHな場面が多かったことしか記憶にない。春樹ファンには申し訳ないが、僕にとっての春樹ってお手軽に読めるけど、Hの話をスノッブな言い回しで包んでいるだけの、高級お菓子といった印象で、一通り読んでいるのだけど、ほとんど記憶に残らない。だから、原作との比較はできません。
ただ、春樹独特の言い回しと、Hが中心となる登場人物たちを映像化するには、やはり、フランス文化圏の監督でなければ駄目だな、と納得しました。京都の療養所の風にそよぐ緑の中でのワンカットでの、ワタナベと直子の掛け合い、プールのなかでスタイルよく泳ぐ緑、などとにかく美しい画面が満載。さらに、いかにも昭和40年代という美術、衣装のみごとさ。こうしたものがあるから、男女の営みがそれほど生々しく感じられず、でも、ひたすらやりまくる話がうまく成立する。
さらに、松山ケンイチと菊地凛子の演技力の見事さ。松山はカメレオン俳優という異名があるから、有る程度分かっていたけど、菊地がここまでナチュラルに直子に成りきっているとは思わなかった。「モテキ」の林田とはまったく別人だもの。大切なものを失った喪失感や、亡き恋人の親友と寝たことで心の裂け目が拡大していく様子がよく表されていた。また、水原希子は映画初出演だそうだけど、素人ぽさと見た目のクールな美しさが緑の現実感を希薄にさせ、村上世界特有の登場人物に成っていたと思う。先輩役の玉山鉄二も、「ハゲタカ」も思ったけど、脇に回ると本当にうまい。
そして、タイトルのノルウェイの森だけど、もっと劇中流れまくるかとおもったらそうではなく、他の当時の曲を流すセンスもいい(権利の問題かもしれないが)。音楽のジョニー・グリーンウッドは「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」も担当しており、あの作品も映像、美術独特のものがあったな納得。だから、本作も文学、美術、音楽の総合芸術みたいになっていたのかな。採点は7.5(日比谷スカラ座)
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