2021年02月23日

復讐者に憐れみを

 パク・チャヌク監督の復讐3部作(残りは「オールドボーイ」「親切なクムジャさん」)のなかで唯一みたことなかったけど、3作のなかで有る意味、実際に起きそうな話で、悲劇の連鎖がたまらなくいい作品でした。
 
 【ストーリー】
 聴覚障害の工員、リュウ(シン・ハギュン)は、姉(イム・ジウン)が腎臓病にかかり、移植手術を迫られていた。だが、リュウは看病のために工場を休んだため、首になり、怪しげな臓器ブローカーに手術費と自分の片方の腎臓をだましとられてしまう。
 
 怒りと絶望にふるえるリュウに、恋人のユンミ(ペ・ドゥナ)は、リュウの取引先の社長ドンジン(ソン・ガンホ)の幼い娘ユソン(ハシ・ボベ)を誘拐しようと持ちかける。身代金は、社長からすればはしたがねの手術費用さえもらえばいいし、そのあとは解放するのだから、「良い誘拐だ」と。だが・・・



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 【感想】
 誘拐は悪いことだが、そこまでリュウたちを追いつめた社会のむごいこと。日本でも、貧富の差が拡大しており、誘拐までするというのはさておき、こうした悲劇はおきかねない。弱いものが、さらに弱いものから奪う現実世界の残酷さがたまらなく哀しい。
 
 そして、復讐することのむなしさ。だれかに復讐する人も、別のだれかの復讐のターゲットになっている。因果は巡るではないが、だれかが憐れみの心をもって、この連鎖を断ち切らなければいけない。それができなかった愚か者たちには、悲惨な結末が待っている。何かに復讐するストーリーはいくらでもあるけれど、ここまでストレートに人間の愚かさを表した作品は他に例を見ない。
 
 そして、韓国映画らしい、残酷な復讐の仕方。気が弱いひとは目をそむけたくなるのでは、と思えるほど。でも、実際に愛するものを失ったら、そこまで残酷な方法をとってまで復讐したくなる、という気持ちも分かるんだな。それが、たとえハッピーエンドでなくても。
 
 ペ・ドゥナは誘拐の発案者だが、本人に決して悪気があるわけではない。そのへんのさじ加減が絶妙。ちょっと頭が悪くて、簡単に金を得ようとするには犯罪しかない、って現実にも結構ある。さらに、役が役だけに、激しいHシーンや暴力シーンも挑戦。これが、「空気人形」のヌードとはうってかわって、獣のような印象を受けるのだ。本当に演技の引き出しが多い女優だ、と感心した。
 
 シン・ハギュンの、社会の弱者で、優しい目と狂ったような目を持つリュウの演技も圧巻。また、韓国を代表する俳優、ソン・ガンホはスターオーラを押し殺して、これまた、人生を狂わしていく男を熱演した。こういう映画を作る韓国は、やはりすごい。採点は8.
posted by 映画好きパパ at 21:29 | Comment(0) | DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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