近所のDVDレンタルが旧作100円キャンペーンをやってきて、韓国作品ばかりでは飽きると思い、借りてきました。初めて見たけど、さすがカンヌとオスカーをとった名作だけありますね。
【ストーリー】
ポーランドの著名なピアニスト、シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)はラジオ番組を持ち、友人の妹のドロタ(エミリア・フォクス)との恋もうまくいこうとしていた。だが、ナチスドイツがポーランドに侵攻。シュピルマン一家はゲットー(ユダヤ人居住区)に閉じこめられてしまう。
狭いゲットーの生活にようやく慣れたころ、一家は強制収容所へ連れていかれる。そのなかで、シュピルマンだけが運良く助かった。だが、戦争はますます激しくなり、ユダヤ人をとりまく環境はどんどん悪化していく。
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【感想】
ロマン・ポランスキー監督自身、ポーランドのゲットーに閉じこめられ、母を収容所で失っている。そのこともあり、この映画にかける思いというのは、他人には想像すらできなかったろう。ちなみに、監督は身重の妻をカルト教団に殺され、自身は少女への淫行容疑で指名手配を受け、先月、スイスの警察に身柄を拘束される、というその後も並みの人間には想像できない人生を送っているのだが。
映画は決して、ドラマチックに描かれない。シュピルマンはピアノは弾けるものの、無力でひたすら逃げ回るだけ。ナチスドイツに立ち向かうヒーローではない。また、ユダヤ人の迫害、虐殺も、ごく日常の風景として当たり前のように行われている。そして、ユダヤ人も、自分の命おしさに同胞を迫害するものや、貧しい老婆をつきとばして食料を奪い取るものなど、極限状態の人間のあさましさを、淡々と描写している。そこが、また、不気味で怖かった。よく、虐殺シーンはオーバーアクト的に描かれるけど、恐らく実際も、ごく普通の人が行った、日常風景だったのだ。
終盤は廃虚となったワルシャワの町をひたすら逃げまどう。ユダヤ人に同情的だった将校ホーゼンフェルト大尉(トーマス・クレッチマン)の前でショパンを弾いたことで、何とか命を永らえるが、人間の生存本能のすごさをみせつけられた。そして、だからこそ、ショパンのピアノの美しい調べが、愚かな人間をすべて超越するかのように聞こえる。廃虚のセットも含めて、滅びの美をこれほど感じさせる作品も少ないだろう。
重たいテーマだということもあるが、演出、美術など、これぞ映画と思わせる作品。テレビ映画の多い邦画のような無駄な盛り上げ、説明などは一切ない。まさに魂をゆさぶる傑作であり、ホロコースト映画はおしなべてそうなんだろうけど、観客の人生、レベルが問われる作品だと思う。残念だったのが、言葉が英語だったこと。スピルバーグと違い、ポランスキーはポーランド語はしゃべれると思うのだが。採点は8。
2021年02月23日
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