2021年02月23日

あの日、欲望の大地で

 良い映画と思うけど、奥が深すぎて、登場人物の心理に理解するのに時間がかかりました。女性か女性の気持ちが分かる人向けで、僕のような単純な男性には不向きな映画です。「バベル」の脚本家ギジェルモ・アリアガの初監督作品とあり、時系列をバラバラにしているのも、混乱する原因でした。

 【ストーリー】
 ポートランド。レストランのマネジャー、シルビア(シャリーズ・セロン)は、過去にトラウマがあり、男性とうまくつきあえない。今も好きでもない男とダラダラ不倫して、そんな自分が嫌になって、自傷癖もある。

 ニューメキシコの荒野のトレーラーで火災が起こり、不倫中の男女が焼死した。母のジーナ(キム・ベイジンガー)を失った娘のマリアーナ(ジェニファー・ローレンス)は、葬式を終えた後、父ニック(ヨアキム・デ・アルメイダ)を失った少年サンティアゴ(J・D・パルド)に話しかけられる。

 メキシコで農薬散布をしていた飛行機が墜落してパイロットが重傷を負った。パイロットの娘の少女マリア(テッサ・イア)は、父の同僚、カルロス(ホセ・マリア・ヤスピク)に連れられて、自分を産んですぐに家出した生き別れの母を探しに、アメリカへ行く。





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【感想】
 シルビア、ジーナとマリアーナ、マリアの4人が中心となり、別々に語られる3つの物語が、後半に向けて一つへと収束していく。「バベル」「21グラム」などでギジェルモ・アリアガが好みの手法で、自分が監督になってもその手法をしっかり維持している。ただ、自分の脚本した作品よりも、かなり丹念に登場人物の心理を描いており、それもみんな心に傷を負っているというのがたまらなくしんどい。

 なぜ、ジーナは不倫に走ったのか、なぜ、マリアーナとサンティアゴはいわば親の仇同士なのに接近したのか、なぜマリアは母に捨てられたのか、そして、なぜシルビアはまともに人を愛することができないのか。それぞれ、非常に些細なことの積み重ねであり、ぼんやりしていたら気付かないようなシーンに理由が秘められており、最初から最後まで見逃さないよう緊張を強いられる。登場人物の心理は理解はできるけど、絶対に自分は体験したくないような哀しい人ばかりだ。

 最初は、画面を追うばかりで、3つの物語がどう絡むか分かりにくいけど、次第にパズルの謎解きのように伝わってくる。せっかくオスカー女優2人をはじめ、演技派をそろえているので、できればDVDなどでじっくりと見返して、表情の意味を確認したい。

 主役にシャリーズ・セロンというのもうならせるキャスティング。オスカーも受賞し、ハリウッドでもトップクラスの女優だけど、幼い頃にアル中の実の父親に殺されそうになり、セロンをかばった母親が父親を射殺するという、まさに映画になりそうな生い立ちをもっている。その彼女が、崩壊した家族とトラウマを持つ女性を演じるというのもすごい(セロンはプロデューサーも兼ねている)し、それだけに並々ならぬ演技となっていた。

 もう一人のオスカー女優、キム・ベイジンガーも、かなり老けていたのにはがっかりだけど、スターのオーラを完全に消し去り、不倫に走らざるを得ない哀しい人妻になりきっていた。また、若手女優も、母親が不倫しているとうすうす気付き、自分よりも男を選ぶ母親に次第に不信感を募らせるようになったマリアーナの、若くして人生投げやり感あふれる姿はみていて痛々しいし、ジェニファー・ローレンスがそれだけしっかり演技していることでしょう。ただ、男が見て楽しいかというと、楽しさよりもしんどさを感じてしまいました。登場してくる女も悲惨だけど、男の方がよりみじめだしね。採点は7.(渋谷BUNKAMURAルシネマ)
posted by 映画好きパパ at 22:24 | Comment(0) | 2009年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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