2021年02月25日

すばらしき世界

 ヤクザの更生の難しさを描いたのは「ヤクザと家族」に似ているけど、西川美和監督らしい正面からの淡々としたかんじ。タイトルを含めて底意地の悪さを感じてしまいました。

 作品情報 2020年 日本映画 監督:西川美和 出演:役所広司、仲野太賀、長澤まさみ 上映時間:126分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ湘南 2021年劇場鑑賞17本



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 【ストーリー】
 元ヤクザで殺人罪で服役していた三上正夫(役所広司)が13年の刑期を終え出所した。優しい所もあるが、まっすぐで癇癪もちの三上は60歳過ぎるまで刑務所と娑婆をいったりきたりだったが、かたぎになろうと決心する。

 だが、世間の目はなかなか厳しい。それでも身元引受人の庄司弁護士夫妻(橋爪功、梶芽衣子)や町内会長の松本(六角精児)らの支えを受け、前に踏み出そうとする。テレビ局の吉沢(長澤まさみ)は、フリーの制作ディレクター津乃田龍太郎(仲野太賀)に、三上の密着取材を命じるのだが…

 【感想】
 三上を役所が演じていることで存在感がたっぷり。元ヤクザの更生が大変でしょぼくれてしまうというイメージとは程遠かったし、松本のような世話焼きの良い人に囲まれたというのは本当にラッキーということで、悲惨さがほとんどないのですよね。もちろん、三上が社会でいきていくために、自分の良さを押しつぶさないといけないのは大変だけど、社会ってそういうものですしね。

 ただ、三上にとってみれば大変だけど、周囲の人はしょせん他人事。自分たちの善意や常識を意図せず三上に押し付けようとしていて、世間から隔絶されていた三上の重荷になっていることを、実は一番若く、口論していた津乃田が見抜いているというのも不思議な感じがしました。人間関係というのは難しいですよね。

 タイトルも、ラストも観る人によって受け取り方が違うようにとっていたそうです。確かに人間の善意というのは、本当にすばらしいものなのか、あるいはすばらしい世界をつくるために余分なものを排除するものなのか、どちらにもとれそう。西川監督の底意地の悪さを感じたのはそのあたりでしょうか。
 
 役所、橋爪、梶とベテラン陣はさすがですし、白竜とキムラ緑子のヤクザと姉御コンビもなかなかのもの。チョイ役ですが、北村有起哉がケースワーカー役で、まじめなゆえの空回りぶりが「ヤクザと家族」とおんなじで笑えました。そして物語の狂言回しともいえる仲野太賀がベテランたちにひけをとらない演技ぶり。長澤のうすぺらいマスコミ人もよかったし、役者への演出はさすがだと、感心しみじみです。
posted by 映画好きパパ at 07:00 | Comment(2) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「西川美和は底意地が悪い」
「タイトルのつけ方も底意地が悪い」

まったく同じワードをパパさんもお使いになっているのを
自分でレビューを書いた後で知ってビックリ!
まさにその通りですよね。

同じ元ヤクザが世間からハブられる映画でも
『ヤクザと家族』が結構ウエットだったのに対して
こちらはとことんドライな印象でした。
その辺の描き方は女性監督ならでは、という事でしょうか?

…あ、こんな書き方すると
どこかの偉い人みたいに女性蔑視とか言われますかね。
マズい、マズいw
Posted by 西京極 紫 at 2021年02月27日 15:38
コメントありがとうございます。
やはり、底意地の悪さは感じますよね。
個人的にはヤクザと家族はウェットで泣けたのですけど、
本作はそんな見方すら見透かしているようでしんどかったかも。
女性監督というより西川監督ならではの気がします
Posted by 映画好きパパ at 2021年02月27日 18:50
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