2021年03月03日

光州5・18

 1980年、軍事政権下の韓国で民主化を求めが市民数百人が軍に殺された光州事件。今なお謎の多い事件だけど、自国の嫌な歴史をきちんと映画化しているのは偉い。また、戦闘描写も迫力あり、ハンガリー映画「君の涙ドナウに流れ」を見たときにも思ったけど、邦画は大丈夫なのか(「隠し砦」の迫力ない戦闘シーンをみたあとだけに)と一抹の不安を覚えた。

 【ストーリー】

 1979年に朴正煕大統領が暗殺されたあと、韓国では政情が不安定になり民主化ムードも出てきたが、軍部が政権を掌握して弾圧。5月17日に全国に戒厳令をひいた。光州では5月18日、これに反対する学生たちのデモと軍が衝突、その際に無関係な市民も制圧対象としたことから、不穏な雰囲気は市全体に広がっていく。

 タクシー運転手のミヌ(キム・サンギョン)は、両親をなくしているが成績優秀な高校生の弟のジヌ(イ・ジョンギ)を大学にやろうと一生懸命稼いでいる。彼はジヌが通っている教会の信者で看護師のシネ(イ・ヨウォン)に一目ぼれしたが、奥手なためなかなか前へ進めない。5月18日、ようやくのこと、3人で町に映画を見に行ったところ、町ではデモ隊と軍が衝突。映画館の中にも催涙ガスが流れ込み、3人は必死の思いで逃げ出す。シネの父で退役した軍幹部のフンス(アン・ソンギ)は、軍と市民の間を調停しようとするが、対立はエスカレートする。

 混乱のさなか、ジヌの同級生が死んだことが伝わる。翌日、学生だけでなく市民もデモ隊に加わったが、軍は無差別に発砲。多くの死傷者をだす。そして、ミヌの目の前でジヌも撃たれた。





ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村
 【感想】

 韓国映画だから韓国人にとって当たり前のことで省いているのだろうが、光州事件の説明がないのでわかりにくい。さらに、事件についても、忠実に再現しているのではなく、かなりの主観的な偏りやメロドラマ部分を強くいれているので、史実とは異なる部分もあるらしい。それでも、ドキュメンタリー路線をとらず、メロドラマやギャグシーンを加えたことで見やすくして、韓国の歴代興行収入8位という大ヒットを記録した。

 正直、ストーリーは一本調子だし、デモがはじまるまでの平穏な市民生活を映し出している部分は工夫が少なく退屈ですらある。けれども、デモが始まってからの戦闘場面の描写は迫力が十分。韓国国歌をうたっているデモ隊にいきなり乱射が始まり、老人、子供関係なく撃たれていく場面に息をのむ。とにかく、軍の暴虐さに見ているこちらまで怒りがわく。ごく平凡な運転手だったミヌが、武器を手にとるようになるまでのいきさつがすんなり受け入れられる。

 そして、クライマックスの軍突入シーンもなかなかのもの。それまで脇役としてさりげなく登場していた人たちにも、それぞれ見せ場を与えることで、物語に深みをだした。「私たちを忘れないでください」というシネの悲痛な叫びや「オレたちは暴徒ではない」というミヌのセリフも心に刻まれる。そして、ラストに出てくる写真。よく見ると、一人だけ違う表情の人物がいるのだ。その意味も考えさせられる。

 キム・サンギュン、イ・ジョンギといった若手に、何よりも韓国を代表する名優アン・ソンギ先生の存在が大きい。そして、イ・ヨウォンの清楚な表情。脇役にも韓国映画でおなじみの面々が配されていて、しっかりとした演技をみせてくれる。

 ただ、個人的には、あまりにも感動しろよといいたげな演出にはちょっとひいてしまった。軍隊とデモの衝突を描いた映画ではポール・グリーングラス監督がアイルランドを舞台にしたドキュメンタリー調の映画「ブラディサンデー」の方がかなり上質だし、エンタメでも「君の涙、ドナウに流れ」には及ばない。けれども、邦画で最近、こうした戦争映画風のアクションシーンが絶滅しているようなのをみると、こういう作品がある韓国映画はうらやましい。それとも、命を張るまで自由や尊厳が侵される危機が、日本にはないから、映画もたいしたことないということなのだろうか。戦後すぐにつくられた「七人の侍」とか「ゴジラ」はものすごい迫力だったのに。採点は7.(アミューズCQN)
posted by 映画好きパパ at 22:53 | Comment(0) | 2008年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。