【ストーリー】
17世紀のスペインは、世界一の大国の座を英国に奪われ、徐々に衰退していった。スペイン歩兵部隊の傭兵で、剣の達人アラトリステ(ヴィゴ・モーテンセン)は、戦友の遺児イニゴ(ウナクス・ウゴルデ)を育てながら、平時は剣客稼業をしている。ある日、暗殺の依頼を受けるが、嫌な予感がしたアラトリステは、寸前のところで暗殺を取りやめる。その裏には国王をも巻き込んだ、スペイン宮廷を動かす陰謀があった。
やがて、出征して戦場で活躍して戻ったアラトリステは友人の妻で、高名な女優マリア(アリアドナ・ヒル)と惹かれあうようになる。一方、イニゴも王妃の女官、アンヘリカ(エレナ・アナヤ)と愛し合うようになるが、アンヘリカはアラトリステの宿敵の一族だった。
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【感想】
原作はスペインの人気小説なのだが(未見)、単行本6冊の中身を2時間強の映画に詰め込んでいる。原作ファンは喜ぶだろうが、そうでもないと、エピソードがぎゅうぎゅうに詰め込まれ、しかも、飛び飛びになっているので、まったく理解できない。伏線らしきものがあっても放置されるし、すぐに●年後というふうに時間がとんでしまう。また、当時のフェリペ4世をはじめ、実在の貴族、芸術家らも出てくるし、戦争の場面は史実に即した戦場なんだけど、スペイン映画なので、当然、これはどんな人物か、どこの戦場なのかという説明はなく予備知識がないとストーリーを追うのは不可能に近い。
ただ、ヴィゴ・モーテンセンのもつ、傭兵のワイルドさの雰囲気はなかなかいい。リアリズムを追求しようとするのか、泥のなかをはいずり回り、飢えに苦しみ、敵の殺し方は残酷で痛そう。画面も全体的に暗い。「イースタンプロミス」「ヒストリー・オブ・バイオレンス」などで活躍したヴィゴならではの、男っぽいバイオレンスだ。ヴィゴはテンマーク、アメリカ人なんだけど、滅びゆくスペインの栄光同様に、時代遅れだけども男としての見せ場があるアラトリステ役は、スペインの観客が見れば大喜びだろう。
また、登場人物も善悪それぞれ両面を持っており、深みを増している。例えば、ヒロインの一人、アンヘリカはイニゴは愛している者の、アラトリステを殺すためには手段を選ばない。アラトリステも友人の妻を平気で寝取る。実際の人物は善悪はっきり分かれることなどないのだから、ここらへんもリアリズム志向の表れか。
映画を見た後は、ストーリーが分からなかったこともあって評価は低かったのだけど、ネットで調べたら、ああ、これはこういう意味があるのかと納得させられることも多々あった。ただ、映画を独立した芸術として見た場合、こういうことでいいのかというと疑問。スペイン人だったら自国の歴史をとりあげて評価は高いのだろうけど、日本ではなあ。登場人物も覚えにくいし(みんなヒゲで、名前もアラトリステとか言いづらい)せめて三部作ぐらいにして、一作ずつ丁寧に仕上げれば良かったのに。採点は5(TOHOシネマズららぽーと横浜)。
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