2021年03月09日

永遠のこどもたち

 怖くて切なく、温かいという相反するような要素をすべて兼ね備えた一級の作品。あえて分類すればホラーになるんだろうけど、最後にはやさしい感動に包まれました。

 【ストーリー】

 孤児院出身のラウラ(ベレン・ルエダ)は、閉鎖された孤児院を障害児施設として復活させようと、夫で医師のカルロス(フェルナンド・カヨ)、7歳の息子シモン(ロジェール・プリンセプ)とともに、海辺の村に戻ってきた。ラウラの心配は病弱なシモン。彼は空想好きで、架空の友達を作って遊んでいる。海岸の洞窟にハイキングにきたシモンは、ラウラに「トマス」という友達が洞窟にいるので、家に遊びに来てもらってもいい?と質問する。そして、トマスが迷わないようにと、海岸から帰る途中、貝がらを目印に置いてかえる。

 施設開設のため忙しいラウラに奇妙な出来事が起こった。深夜、物音に気付いてドアを開けると、そこには大量の貝殻が。さらに、ソーシャルワーカーを名乗る不審な老女ベニグナ(モンセラート・カルーヤ)が現れる。施設の開設当日、シモンが「トマスの部屋に行こう」とラウラにつきまとうが、忙しいラウラは「トマスなんていない」と怒鳴りつけて、その場を去ってしまう。だが、シモンはそのまま行方不明になってしまった。必死になってシモンを探すラウラ。果たして、彼女は息子と再会できるのか。





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 【感想】

 プロデューサーのギレルモ・デル・トロの前作「パンズ・ラビリンス」同様、実際に超常現象が起きているようにもみえるし、すべてを合理的に説明できるようにもみえる。また、ラストはハッピーエンドにも、バッドエンドにも見える。前作同様、見た人の間で議論を呼ぶだろう。僕は超常現象、ハッピーエンド派なのだが、この作品をバッドエンドととらえる人がいるのは意外でした。

 ホラーとしてみれば、スペインの人けのない海辺の洞窟、孤児院の巨大で古ぼけた建物など、いかにも何かがいそうで、それだけで上質のゴシックホラー。深夜、物音に気付いたラウラが孤児院を探るシーンは、ゾクゾクする。さらに、あえてとったと思うが、一歩間違えば安っぽくなるようないかにもホラー調の恐怖をかきたてるBGMを多用し、ショッキングなシーンも盛り込み、そういう作品でないだろうと予想する観客を驚かし、怖がらせる。

 ところが、母と子の愛情物語としてみれば秀逸なのだ。シモンにはある秘密があるのだが、そのことに加えて、シモンを怒ったために行方不明になったのは自分のせいと責めるラウラの気持ちは痛いほどよく伝わる。また、オカルトめいたものに飛びつくラウラをみて、同じ子供を失って気落ちしながらも、彼女を何とか立ち直らせようとするダニエルカルロスの優しさも痛いほど伝わってくる。そして、大人もかつては子供だったという当たり前のことも、ノスタルジーをもかきたてる。

 ストーリー自体は冷静になって考えればありがちで、脚本には大きな穴があるのだけど、怖がらせる手法と、親子愛、夫婦愛、ノスタルジーといったものをふんだんに入れるることによって、見終えたあとも余韻にひたれる出来に仕上がった。伏線の張り方も見事で、前半から無駄な場面が一つもない。悪人が一人も出てこなく、みんな善意の行動をとるのに…というのも評価が高くなる。J,A,バヨナ監督はデビュー作だが、ギレルモの影響が強いのだろう。

 スペインの映画だけになじみのない俳優が多いが、ベレン・ルエダの我が子への愛情と、息子を捜すためには、外から何と思われようとも必死で突き進む姿は万国共通と実感。脇役では、なぞの老女を演じるモンセラート・カルーヤの不気味さや、霊媒師役でチャーリー・チャプリンの娘、ジェラルディン・チャプリンの存在感が良かった。また、スペインにだるまさんが転んだに似た遊びがあるというのも、ちょっと驚き。採点は8(ヒューマントラストシネマ渋谷)
posted by 映画好きパパ at 22:28 | Comment(0) | 2008年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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