【ストーリー】
島根県雲南市の高校3年生、鉄郎(橋爪遼)の1日は入院中の母親(宮崎美子)に牛乳を届けることから始まる。もうすぐ夏休みなのに、進路をまだ決めていないことが不安だ。東京に出たい気はするが、何かやりたいものがあるわけでもない。家族ぐるみの付き合いの同級生、多賀子(柳沢なな)とは親友同士。2人の親友の裕二(松尾傑)、久美子(平田薫)らはやきもきするが、シャイな鉄郎は、どうしても好きだということを伝えられない。
夏休みを前に、担任の尾崎(甲本雅裕)は、地元出雲に伝わる古来からの伝説をいろいろ教えてくれる。町はずれの神社には、ヤマタノオロチに酒を飲ませたツボが伝えられ、その封印を解くとバチが当たると伝えられていた。夏休みに入ったある日、学校の水泳部の先輩で、オリンピック候補の信吾(黄川田将也)が帰省する。信吾が後輩の多賀子を七夕祭りに誘ったと聞いた鉄郎は、いてもたってもいられなくなったのだが…。
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【感想】
最近の邦画で島根を舞台にしたのは鳥取や山口に比べて多い気がするけど、(「砂時計」「天然コケッコー」など)島根県がロケ誘致に力を入れているのはもとより、日本人の原風景のような山、森、田畑というのが多く残っているからだろう。本作でも、島根のゆったりとした自然風景は堪能できたし、ヤマタノオロチ伝説をはじめ、古代日本の伝説も物語とうまく絡めていた。
ただ、錦織良成監督の特性なのか、やたら丁寧に、逆に言えばスローテンポにとる。島根の町並みや登場人物を含めた人々の日常生活を映し出したいのはわかるけど、さすがに10分、15分は削れるだろうという感じ。また、鉄郎の気持ちがじっくりと映し出されるために、彼の優柔不断さがそのまま伝わり、イライラしてしまった。尾崎を始め、田舎特有の善人だけどおせっかい、おしつけがましい人々をそのまま無条件で受け入れているのも、ちょっとね。
配役は若手、新人中心なのにはまっていた。橋爪の優柔不断な演技にイライラするというのも、それだけ、役にあっていただろうし(「のだめ」に出演した時とはえらい違い)、柳沢ななも、清潔で美人だけどどこかやぼったい田舎の女子高生をさわやかに演じていた。橋爪がぐたぐたした演技と、柳沢の爽やかさが好対照で、物語的にもいい。そのほかの同級生役も演技に不安な生徒は出ていないし、甲本、宮崎、菅田俊といったベテランがしっかりと脇で締める。
ただ、母親を難病にしたというのは、いかにも日本映画的。なんでこんな俗っぽいことをしたのか。さらに、都会で夢破れた先輩が田舎で温かく見守られるというのもご都合主義的で。公平を期すと、映画館ではこうした場面ですすり泣く声が聞こえたから、日本人の琴線に触れるのだろうけど、これだけ上質の映像、演出ができるのだから、あえて、ベタベタのパターンは排してほしかった。採点は7。(渋谷イメージフォーラム)
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