【ストーリー】
ムーラン・ルージュのダンサー、ピエール(ロマン・デュリス)は重い心臓病で職場を辞める。心臓移植しなければ助からないといわれた。姉のエリーズ(ジュリエット・ピノシュ)のもとに転がり込んだ彼は、窓の外から健康な人たちが幸せそうに暮らしているのを観察している。
ピエールの前のアパートに住む女子大生レティシア(メラニー・ロラン)は、「君を愛している」などと書かれたメールを大量に受け取ってけげんに思っている。贈り主はレティシアの大学のロラン教授(ファブリス・ルキーニ)。彼は年がいもなく、レティシアに一目ぼれしてしまったのだ。
ロランの弟のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、建築家として成功し、幸せな人生を送っていると思っていた。だが、兄と喧嘩したときに「おまえみたいな普通のやつには分からない」といわれ、「普通」とは何か悩み始めた。
近所の八百屋、ジャン(アルベール・デュポンテル)とカロリーヌ(ジュリー・フェリエ)は離婚したあとも商売は一緒にやっている。喧嘩をしながらも、何となく相手のことが忘れられない。
パリに生きる普通の人たちはきょうも、喜び、悲しみ、悩みながら生きている。
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【感想】
この作品は2度みないと前半は分かりにくい。群像劇だと知っているとはいえ、冒頭から、それぞれの登場人物が短いカットで次々と映る、その意味が後の方にならないと分からないからだ。もっとも、冒頭の部分をしっかり見ていれば、あとの方を味わい深く楽しめるのだけど、そこまで注意深くみるのは結構しんどい。僕が唯一印象に残ったピエールが元気だったころのダンスシーンというのは、後で繰り返し出てくるから分かったけど。
さらに、登場人物が多い。ピエールとエリーズがメインで、その次にロラン教授の話が出てくるけど、ほんの2、3シーンしか出てこない人にも、エピソードが盛り込まれているから、どの人がどの人とつながりがあるかも忘れてしまいそう。グランドホテル形式なんだけど、「マグノリア」「クラッシュ」といった米国映画が、終盤、それぞれのつながりでうならされるのに対して、本作はそういう謎解きのあざやかさみたいなものはない。終始、淡々とパリの普通の人たちの日常を描いている。登場人物が多いので、さらりと流されてしまうような人も出てくる。だから、途中までは退屈で、正直、うとうとしかけた。
だけど、画面からあふれ出るパリ、そして市民への愛情というのが次第に伝わってきた。パリを舞台にしたオムニバスで「パリ・ジュテーム」という佳作がありますけど、あちらは、世界中から集まった18人の監督が18通りのパリへの思いを撮り、中には分かりにくいものもあるけど、本作はさすがにフランス人監督らしい、地元民ならではの何気ないところへの愛情が伝わってくる。フランスで大ヒットというのはよく分かる。
一番パリらしいなあと思ったのは、ほとんどの人の悩みが恋愛であること。しかも、割とムードが盛り上がっちゃうとすぐにベッドインしてしまう。やはりフランス人にとっては恋愛というのが人生で一番大切なんでしょうね。でも、それは人間の本来あるべき姿なのかなあ。
「スパニッシュ・アパートメント」の時から、クラピッシュ監督の音楽の使い方や、タイトルロールは好きだったのだけど、本作もエンディングロールに、登場人物がそれぞれワンカットずつ登場するのが、たまらなくお洒落に感じてツボにはまった。また、子供たちが跳びはねながら踊るシーンを始め、音楽、ダンスも効果的に使っているのもいい。採点は7.5(渋谷BUNKAMURAル・シネマ)
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