2021年03月09日

ラースと、その彼女

 寒い冬にぴったりの、心温まる現代の寓話。何かと嫌なニュースが多かった2008年だけど、年末にこういう映画を見られたというのは、来年は良い年になるのでは、と期待してしまいます。

 【ストーリー】

 雪が積もった小さな町に住むラース(ライアン・ゴスリング)は、心優しくて町中の人から慕われているけど、極端にシャイ。特に女性が苦手で、同僚のマーゴ(ケリー・ガーナー)が話しかけてくると、一目さんに逃げるほど。兄のガス(ポール・シュナイダー)と兄嫁のカリン(エミリー・モーティマー)はラースのことを心配していた。

 ある日、ラースがガスの家を訪れて「彼女を紹介したい」という。喜んだガス夫婦だが、その彼女とは、等身大のリアルドールだと知ってびっくり。しかも、ラースは彼女はビアンカという宣教師だという。兄夫婦はラースをバーマン医師(パトリシア・クラークソン)のところに連れていくが、意外にも、医師は、「彼女が現れたのには理由があるはず。妄想に話しを合わせるように」と診断する。そこで、町の人たちに協力を仰ぎ、ビアンカを本物の彼女として扱うようにしたのだが…





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 【感想】

 リアルドール(ダッチワイフ)に恋する男性という、扱い方によってはいくらでも際物になるプロットだったけど、クレイグ・ギレスピー監督はちょっと突き放したところから、淡々と撮るので、むしろ物足りなく感じたほど。ビアンカによってラースが変化するだけではなく、兄夫婦をはじめとする町の人たちも徐々に変化していくところもいい。
 現実の社会で、人形を人間だと言い張る人がいたら、みんなから引かれるどころか、お近づきになりたくないと思うだろう。けれども、アメリカの小さな田舎町で、みんなが子供の時から知り合いで、ラースの善人を良くしっているという設定が、完全な絵空事にする一歩手前で踏みとどまった。もちろん、ラースを敬遠したり、バカにしたりする人もいるのだけど、でも、大部分の人が善良だというのは、アメリカがこういう小さなコミュニティの善意で成り立っているかと思うと興味深い。

 僕も見ていて、最初は人形でしか見えなかったビアンカが、単なる人形とは違った存在に見えてくるのが不思議だった。事実、序盤はラースとビアンカの存在に振り回される周囲を見て、くすくす笑っていたのだけど、中盤、ラースが思い出の湖畔に彼女を連れていって、ナット・キング・コールの「LOVE」を歌うシーンは涙が出そうに。

 心の病気って、だれもがふとした拍子でかかる可能性があるのかもしれない。ラースが病気になった理由が、徐々に分かってくるのだけど、もちろん、生まれつきシャイだということがあるにせよ、確かになあ、としみじみ思わせる。そして、ラースだけでなく、回りの人にも、それぞれ悩みがあり、はたからみればおかしいように見えることも。それも、ずばっと描かず、見ている人に考えさせるような描写がうまく、僕も自分自身を振り返ってどうなんだろうと思ってしまいました。

 ライアン・ゴスリングは「きみに読む物語」の好青年ぶりを覚えているのだけど、ダサイ長髪とヒゲで、キモカワイイといったところ。マーゴが何で彼のことを好きなのか最初は分からなかったけど、ラースの行動を見ていると徐々に、彼の良さが分かってくる。兄嫁のエミリー・モーティマー、女医役のパトリシア・クラークソンら女性陣もそれぞれ魅力的。ラースを温かく支えるおばあさんたちもとてもすてきだった。

 個人的には、もう少し尺を長くして、ビアンカが来る前の住民たちとラースの触れあいや、ビアンカが来た後のボランティアの様子とかをしっかり描いたら良かったな気がするけど、このくらいあっさりしてもいいかな。採点は7・5。(渋谷シネクイント)。なお、僕が映画を見たときはビアンカはパルコでバイトをしていて、ショーウインドー越しにしか見えませんでした。残念。
posted by 映画好きパパ at 23:06 | Comment(0) | 2008年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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