2021年07月12日

クローブヒッチ・キラー

 父親が連続殺人犯かもしれないと疑念を抱いた少年のミステリー。真犯人あてよりも、家族とは親子とはを考えさせられました。こういうぞわぞわする作品って大好きです。

 作品情報 2018年アメリカ映画 監督:ダンカン・スキルズ 出演:ディラン・マクダーモット、チャーリー・プラマー、マディセン・ベイティ 上映時間:110分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2021年劇場鑑賞121本



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 【ストーリー】
 ケンタッキーの田舎町に住む16歳のタイラー(チャーリー・プラマー)は、優しくて信心深い父ドン(ディラン・マクダーモット)、母のシンディ(サマンサ・マシス)、幼い妹のスージー(ブレンナ・シャーマン)と平穏な生活を送っていた。

 ところが、ある日、父のおんぼろピックアップトラックを拝借してデートに出かけたタイラーは、女性が縛られたSM写真を発見。デート相手にその噂を流され、変態扱いされてしまう。タイラーは父が使っている小屋を調べたところ、SM写真に加えて、10年前に起きた連続殺人事件の被害者の写真もでてきたのだ。尊敬している父は事件と関係あるのか。彼は事件のことを調べるオタクとして周囲からういている少女キャシー(マディセン・ベイティ)とともに真相を突き止めようとするのだが…

 【感想】
 子供だけが真犯人の手がかりをしっていて事件を探ろうというプロットはよくあります。やはり僕の好きな「サマー・オブ・84」もそうでしたし、ある意味、スティーブン・キングの名作「スタンドバイミー」もそうですよね。そうした点では本作をキングがほめているというのは分かる気がします。

 ただ、本作の場合、疑惑の相手が父親だというのが目新しい。優しいけど保守的な家庭ということもあり、父に反抗しない素直な子供だったタイラー。父が団長のボーイスカウトにも参加して、親子でアウトドアを楽しんだりしています。狩猟を子供のうちから教えるというのもアメリカの田舎らしい。

 子供、特に男の子にとって父親が絶対的存在であるほど、いつかは乗り越えなければならず、そのための葛藤がおきます。それが成長ということなんだろうけど、父親の秘密を探って、もしかしたら殺人犯かもしれないという疑惑は、もともと内気で感情をそれほどあらわさないタイラーをより沈鬱にさせます。このあたりの演技は「荒野にて」で話題をよんだチャーリー・プラマーの巧さを引き立てます。

 同時にボーイ・ミーツ・ガールの側面もあり、変わり者と思われていたキャシーと事件を探っていくうちに、心の底でつながりがでてきます。ただ、他の作品と違うのが、恋愛感情が一筋縄でいかないこと。女の子と恋愛するよりも、父親の疑惑を調べるほうがはるかに重要なわけですから。キャシーも尻軽女と周囲から軽蔑されており、そのことに傷ついていることもあるのか、性的な挑発をしてきたりして、単なる初恋物語に終わらせていません。

 さらに、背景にアメリカの保守的な田舎の閉鎖性があります。キャシーは教会にいかないというだけで、犯罪者のような扱いを受けます。銃規制には反対し、皆が知り合いだけど、いったん身内からはじかれると、村八分のようなあつかいをされるわけで、美しい風景とは裏腹に人間の醜さがそこかしこにでています。そうしたなか、熱心なキリスト教徒である両親にとっての信仰はなんなのか、ラスト近くの母親のセリフをどう読み解くかで、これまた根深いアメリカの問題に直結しているかもしれません。警察の捜査能力が無能すぎるように思えますが、これもアメリカの実情なのかもしれません。

 非常に控えめな演出ですし、ストーリーも途中まで来ると、先がみえきますが、家族や社会の問題を浮かび上がらすことが優先されており、考えさせられました。配役も素晴らしく、周囲からも尊敬され、非の打ち所がないように見えたのに、ときどきアブノーマルな側面をみせる父親役のディラン・マクダーモットが好演。キャシー役のマディセン・ベイティも心に傷を負った少女の役にぴったりでした。
posted by 映画好きパパ at 06:03 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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