2021年07月21日

17歳の瞳に映る世界

 これまた女性の生きづらさを描いた作品。中絶は日本では考えられないほどアメリカ社会を分断してますもの。それでも、同年代の親友がいるってことは心強いね。

 作品情報 2020年アメリカ、イギリス映画 監督:イライザ・ヒットマン 出演:シドニー・フラニガン、タリア・ライダー、テオドール・ペルラン 上映時間:101分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2021年劇場鑑賞130本



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 【ストーリー】
 ペンシルバニア州の17歳の少女オータム(シドニー・フラニガン)は望まない妊娠をしてしまう。だが、州の法律では未成年の中絶には親の同意が必要だった。しかし、親との関係が良くないオータムはそのことを言いだせない。

 従姉妹で親友のスカイラー(タリア・ライダー)に相談し、未成年でも中絶ができるニューヨークへ一緒に行くことを決めたのだが…

 【感想】
 非常に抑制された描写で説明シーンなどは一切配されていて、ドキュメンタリーのよう。観客は基本的にはオータムとスカイラーの視点でしか物事がわかりません。例えば、こうしたテーマで大きなイシューとなる子供の父親は誰なのか、なぜオータムは妊娠したのかというのはスルーされています。冒頭、ダイナーで同年代の男の子にオータムがいちなり水をぶっかけるシーンがあり、恐らく彼が父親で妊娠をしって拒絶したのだと思いますが、そういうところも観客の想像にお任せです。

 そんなオータムにとって、本来だったら味方のはずの家庭や学校の友達は心地よい存在ではありませんでした。これも理由をきちんと説明してませんが、恐らく父親は義理の父で、学校でもコミュ障でとがっているためういた存在なんでしょう。さらに、妊娠した後の環境もろくなものではありません。地方都市ということで、中絶はもってのほか。産婦人科医では中絶反対のビデオをみせます。またバイト先の店長は平然とセクハラをするのにだれもとめない。「プロミシング・ヤング・ウーマン」で描かれた病巣がここでもということですね。

 もし、スカイラーがいなければ一人ぼっちで、このだれも味方のいない世界に立ち向かわなければならなかったオータム。でも、彼女との関係も決してべたべたものではなく、時には互いがうざく感じられるのもリアルといえばリアル。

 ニューヨークへ行き、中絶の手続きに時間がかかるため路銀もなくなった2人に、バスで知り合ったジャスパー(テオドール・ペルラン)という青年が近づいてきます。彼は女性は不得手な感じですが、スカイラーへの好意を隠しません。そんな男しか頼れる存在がいない世界というのは、2人の少女にとってなんて孤独なんでしょう。オータムとスカイラーがそっと指をつなぎ合うシーンがありますが、何とも切なくてたまりませんでした。また、ニューヨークは夢あふれる町ではなく、こういう変な輩がうろうろする冷たい大都会であるということも描いているのは、意外と珍しいかもしれません。

 原題は「NEVER RARELY SOMETIMES ALWAYS」。いったいどういう意味かと思っていたら、映画内でそのことがわかるシーンがあり、この何とも言えない単語の羅列の深い意味に絶句しました。アメリカではこういうのが普通にあるのかなあ。ベルリンの銀熊賞を受賞するなど高く評価されていますが、評論家受けとは裏腹に、一般客の評判が悪いというのも、今のアメリカを表しているようです。
posted by 映画好きパパ at 05:59 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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