2021年07月25日

海辺の金魚

 若手女優の小川紗良がメガホンをとり、商業映画の監督デビュー。まだ25歳なのにとてもしっとりと落ち着いた作風で、社会問題への目配りもあり、先行きが楽しみな監督です。

 作品情報 2020年日本映画 監督:小川紗良 出演:小川未祐、花田琉愛、芹澤興人 上映時間:76分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キネマカリテ新宿 2021年劇場鑑賞134本



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 【ストーリー】
 海辺の小さな町。瀬戸口花(小川未祐)は、母の京子(山田キヌヲ)が起こした事件のため、幼いころから児童養護施設に入居していたが18歳になり、高校卒業後には退去しなければならなかった。

 施設長の高山(芹澤興人)は、花のことを心配するが、心を閉ざしている彼女は友人もおらず、高山にも本音を打ち明けなかった。そんな施設に児童虐待の被害者で8歳の晴海(花田琉愛)が入所してくる。心を閉ざしたところが自分と似ていると感じた花は、晴海とふれあううちに少しずつ心を通わせるようになるのだが…

 【感想】
 小川監督は早稲田大で是枝裕和に師事しており、かなり是枝作品に似たテイストです。淡々とした描写に幼い子供たちの自由な演技。カメラマンも「誰も知らない」の山崎裕でした。さらに、18歳の若い女性の揺れ動く心を撮るには世代がほとんど変わらない女性監督というのは適任だったといえましょう。

 金魚は淡水魚であり海では生きていられません。しかし、小川監督は「私はもう一度海へ連れ出したいと思ったのです。映画の主人公が、私が、そしてあなたが、自分自身の人生を歩みだせるようにと祈りを込めて」と語っています。脚本、編集も自分で担当しており、この若さでこれだけしっかりとした哲学で映画に向き合っている真摯な姿勢には感心します。

 物語は児童養護施設をきちんと取材するとともに、子役たちの自然な演技を見事なまでに引き出していました。また、主演の小川未祐にはどのような演技指導をしたのか知りたいところ。花という少女の境遇と強さ、弱さが内在した複雑な心境というものをちゃんと提示しています。子供にとって親とは、家族とはといったテーマに挑みつつ、説明セリフは極力少なく、観客に考える余力を与えているのも見事な感じ。いい子とは何なのかなあ。施設長役にインパクトの強い芹澤を起用しているのもいい効果でした。

 ロケ地は鹿児島県阿久根市で、監督のルーツでもあるそうですが、地方を舞台にした映画にありがちなご当地の宣伝とかが一切なかったのも好感をもてました。日本中、どこにでも似たような話が起こりうるだろうし、海の役割というのもご当地とは関係ないということがわかります。時間が短いのも、散漫にならずに観客の緊張感を保てます。なかなかの秀作で、ボンタンアメが食べたくなりました。
posted by 映画好きパパ at 07:42 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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