作品情報 2020年台湾映画 監督:チェン・ヨウジエ 出演:モー・ズーイー、バイ・ルンイン、ヤオ・チュエンヤオ 上映時間:106分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿 2021年劇場鑑賞142本
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【ストーリー】
幼い少年ヨウユー(バイ・ルンイン)は養父のリン・ジエンイー(モー・ズーイー)、祖母のシウユー(チェン・シューファン)とひっそり暮らしていた。シウユーは重い病気だが、血のつながりのないのにリンは懸命に看病していた。実はリンと亡くなったヨウユーの父リーウェイ(ヤオ・チュエンヤオ)は同性のパートナーだったのだ。
ところが、シウユーが急死。リーウェイの弟リーガン(ジェイ・シー)の訴えもあり、警察はゲイのパートナーが、血のつながらない義母と幼い義理の息子の面倒をみるのはおかしいとして、ジェンイーが財産目当てに殺人を行ったと逮捕する…
【感想】
取り調べで、「なぜパートナーが亡くなった後、血のつながらない義母や義理の息子の面倒をみるのか」といわれたジェンイーは、「それが女性でも同じことを聞くのか」と問い返します。未亡人が義理の親の面倒をみるのは東洋では当たり前でした。それが同性カップルだと奇異にみられることじたいがおかしいことがよくわかります。
実はもしジェンイーがいなければ、リーウェイはカミングアウトせずに、ヨウユーの母である女性と家族として暮らしていたかもしれません。両親のいないヨウユウをみると、ジェンイーは心が痛みます。シーユーにとっても同様です。その負い目をもちつつ、誠実に2人に接する彼の姿をみると、人間本来の善性というのは何なのかと考えさせられます。
一方、血のつながりのあるリーガンは、中国大陸で暮らしていることもあり、ほとんどシウユーやヨウユーの面倒をみることがありません。遠くの親戚より近くの他人という言葉がぴったりですが、それでも家族の情愛というものもあります。ゲイに対する偏見もあり、事態を複雑にしていきます。彼を単なる悪役にしなかったのも、僕も含めた世間の偏見を表すという意味で巧い方法でした。
まあ、ジェンイーが聖人ぽい感じすらあるまっすぐな男で、時には義母から傷つけられる言葉を投げつけられてもしっかり受け止め、3人が実の家族のように思いあって生きていく姿は、心をうちます。それを演じるモー・ズーイーも素朴な演技をするから、観ていると彼が社会から理不尽な目にあうのを助けたくなります。血がつながらなくても家族の愛情、信頼はちゃんとできるということを体現しています。一方、事件の真相が多少あざといような気もしますけど、それを含めて観客を泣かせようとしているので、あらを探すよりも素直な気持ちで
観ていたほうが、心が落ち着く作品といえましょう。
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