作品情報 2019年中国映画 監督:サム・クァー 出演:シャオ・ヤン、タン・ジュオ、ジョアン・チェン 上映時間:112分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:Tジョイ品川プリンス 2021年劇場鑑賞145本
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【ストーリー】
タイの田舎町で、ネット回線の工事をする中国系移民のリー・ウェイジエ(シャオ・ヤン)は冴えない中年男だが温厚な性格で町の人からは慕われていた。妻のアユー(タン・ジュオ)とは仲良しなものの、高校生の長女ピンピン(シュー・ウェンシャン)が反抗期なのに頭が痛い。
ところがピンピンがサマーキャンプで不良高校生のスーチャットに乱暴され、その時の動画で脅されていた。アユーとピンピンは動画を取り返そうともみあいになり、スーチャットを死なせてしまう。ところがスーチャットの母親は地区の警察局長のラーウェン(ジョアン・チェン)で、これまでも息子の不祥事をもみ消していた。自首してもひどいめにあうと恐れたリーは、映画マニアとしての知識を駆使して、家族を守るためのアリバイトリックを作り出す
【感想】
唐人街探偵もそうでしたが、中国では警察は絶対正義です。しかし、場所をタイにすれば相手はタイ警察になるわけですから、いくら悪く描いてもかまわない。もしかすると警察が負けることもあるかもしれない、と二転三転するリーとラーウェンの推理合戦の行方を楽しんで見れました。中国でも、普段悪く描かれていない警察が痛い目にあうのを観たかったのか、ノースターの小品なのに大ヒットしています。
ラーウェンは子供の育て方は間違っていますが、「1000の事件を研究してきた」名刑事。一方、リーは「映画を1000本観たら、世界のたいていのことは分かる」というのがポリシー。まあ、僕自身、映画は1000本以上みてますけど世界のことは全然わからないのですが、同じ映画マニアで、娘を助けようとする父親の姿に、必死で応援しました。
リーが観ている映画は「ショーシャンクの空に」や「セブン」などハリウッド大作もあります。しかし、アリバイ作りに一番参考になったのは、ある韓国映画。日本では小規模公開でしたが、思い切ったストーリーにびっくりした作品でした。さらに、本作のオリジナルはインド映画。監督もマレー系の中国人とあり、アジアの才能が集まったという感じです。
リーはラーウェンの能力を熟知しており、一つのトリックが崩れても、次のトリックを準備しており、警察も次第に焦りを覚えてきます。この警察との対決で、バラバラになりかけていた家族はまとまる一方、まだ幼い娘のアンアンまで巻き込んでいるため、子供たちの心理が案じられます。その一方で、腐敗した警察に捕まると拷問をされる恐れがあり、徹底的に追い詰めれたリーが、だからこそ冴えたトリックを思い出すというのも映画的。
ラストの展開は好き嫌いが分かれるでしょう。犯罪のむなしさというのが伝わってくるけど、家族の悲惨さというか、いったいどうすれば良かったのか、いろいろ考えさせられてしまいます。本編の最後のカットにあえて渋い脇役を使ったことも意表をつかれてすばらしい。エンドロール中のおまけ画像は、暗い雰囲気を吹き飛ばしてくれるのでお見逃しなく。
シャオ・ヤンは「唐人街探偵2」で重要な役で登場しているそうで、「唐人街探偵」シリーズのチェン・スーチョン監督が本作のプロデューサーを勤めています。こういうつながりも面白い。また、警察局長役のジョアン・チェンのど迫力もみものでした。
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