2021年08月09日

復讐者たち

 ナチスのユダヤ人虐殺を扱った映画は多数あるけれど、戦後のユダヤ人による復讐を描いたものは観たことありませんでした。どこまでが史実かわかりませんが、エンタメぽくも撮られており、最後まで画面にひきつけられました。英語でなくてドイツ語だったらなおよかった。

 作品情報 2020年ドイツ、イスラエル映画 監督:ドロン・パズ、ヨアヴ・パズ 出演:アウグスト・ディール、シルヴィア・フークス、マイケル・アローニ 上映時間:110分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2021年劇場鑑賞148本



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【ストーリー】
 アウシュビッツの生き残りのユダヤ人マックス(アウグスト・ディール)は、故郷に戻り妻子が殺されていたことを知り復讐を誓う。英国軍のユダヤ人部隊が極秘にSS関係者を処刑していたことを知り、部隊長のミハイル(マイケル・アローニ)に頼み込んで作戦に加わる。

 一方、SS関係者だけでなくドイツ人全体に復讐しようとする過激派組織「ナカム」が暗躍していた。ナカムの計画が成功したらユダヤ人は今度こそ国際社会からはじかれ、イスラエル建国が不可能になるとミハイルからの依頼で、マックスはナカムに潜入することになる。

 【感想】
 ユダヤ人虐殺については多くの映画を観ましたが、当事者でないと本当の気持ちは分からないでしょう。映画の最初と最後に、ある日突然罪もない家族が皆殺しにされたらあなたはどう思うかという質問が観客に向けられますが、本当にその場にならないと分からない問題です。

 マックスも家族を殺され、SS関係者への復讐は果たしていきます。しかし、それがドイツ人全員になるとどうなるのか。映画に出てくるドイツ人は、庶民でもユダヤ人に対して悪意を持った人が多く、日本からみていてもイラっときます。まして、当事者たるマックスにはナカムの計画が本当に悪いのか迷いがあったでしょう。

 一方、ナカムの幹部アンナ(シルヴィア・フークス)は自分の子供を助けられなかった懺悔からナカムに加わりますが、ドイツ人の小さな子供まで殺す計画に次第に悩まされていきます。史実をしっている僕はナカムの計画が成功しなかったことはしっていますけど、メンバーのぎりぎり追い込まれていくような心理サスペンスはなかなかのもの。また冒頭の映像や、旅の途中で老人からもらった謎の袋など映画的ギミックをうまくつかい、こちらの予想を裏切ってくれます。そうしたなか、ドイツに対する復讐とはなんなのか、きれいごとかもしれませんが、いろいろ考えさせられる結末はおみごとでした。

 一方で、イスラエル建国が万々歳でなく、その後も70年続く中東の混乱の要因になったわけです。映画はイスラエル建国を肯定的にとらえていますが、そうではない現実を考えると、本当に国際政治は難しい。

 アウグスト・ディールはこうした社会派的作品に積極的に出演しているそう。「イングロリアス・バスターズ」ではゲシュタポ役を好演していましたが、ユダヤ人ではないのにユダヤ人役を演じるのはどういう役作りなのかも興味があるところです。
posted by 映画好きパパ at 06:14 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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