2021年08月11日

返校 言葉が消えた日

 台湾の白色テロ時代を舞台にした、ホラーゲームが原作。台湾で大ヒットしましたが、社会派ホラーというのは初めて見ました。

 作品情報 2019年台湾映画 監督:ジョン・スー 出演:ワン・ジン、ツォン・ジンファ、フー・モンボー 上映時間:103分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2021年劇場鑑賞150本



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 【ストーリー】
 1962年、戒厳令下の台湾では自由主義的な書物を読むだけでも逮捕され、拷問死することすらあった。女子高生のファン(ワン・ジン)はある日、放課後学校で眠ってしまい、気付いたら真っ暗な校舎に閉じ込められたことに気付く。

 同じく閉じ込められた後輩のウェイ(ツォン・ジンファ)と一緒に逃げ道を探すファン。学校ではファンのあこがれる教師チャン(フー・モンボー)らが禁書の読書会を開いていた。ファンたちがその部屋に行くと、部屋は血だらけで

 【感想】
 台湾の白色テロ時代が背景にある作品は「非情城市」などがありますが、がっつりホラーとして描いた作品は初めて。「サイレント・ヒル」に似た雰囲気があるのは、同じく脱出ゲームが原作だからなのでしょう。実際に高校の読書会が摘発され、教師や生徒が死刑となったできごともあったそうです。

 本作で自由を求める生徒や、今の軍国主義的教育がおかしいと考える若手教師たちの間で開かれる読書会は、青春の一ページのように描かれていました。本を読んでいただけで反政府運動というのは今の日本では考えられませんが、独裁主義的な国家では多かれ少なかれ起きています。今の自由の大切さがはっきりとわかります。本作に出てくる怪物たちが、抑圧的な政府の象徴で目隠ししている生徒たちが、それを見て見ぬふりをしていることだというはっきりとした演出をしているのが印象的です。

 一方、ファンの複雑な家庭環境とチャンへの思い、そしてウェイのファンへの憧れといったものが横糸としてあり、物語を重層的なものにしています。こうしたなか、襲い掛かる怪物をかわして学校の謎を探り、無事脱出できるのか。残酷な直接描写はしておらず、そうした怖さはないものの、心の奥で考えさせられる作品になっています。

 ツォン・ジンファは台湾期待の若手女優で、大人しそうだけど目力が強く、今後がたのしみ。フー・モンボーは高橋一生に似た感じで、ファンとチャンのシーンなどは、セリフさえ聞こえなければしっとりした邦画の恋愛映画といってもいい雰囲気です。ラストの切なさも含めて、アジアのしっとりした雰囲気と歴史によくあった作品です。

 なお、本作は軍や当時の国民党政府を批判しているし、ホラー映画として白色テロを取り扱うのはいかがだという論議もあるそうです。でも、台湾の文化部長官が、政府としてこの映画を支持するといったそう。政治風刺に弱い邦画界とは全く違った映画環境にも驚きました。
posted by 映画好きパパ at 06:22 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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