作品情報 2021年日本映画 監督:山田洋次 出演:沢田研二、菅田将暉、宮本信子 上映時間:125分 評価★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマズ座間 2021年劇場鑑賞158本
【ストーリー】
アルコールとギャンブル依存症の老人、円山郷直(ゴウ、沢田研二)は借金を作って妻の淑子(宮本信子)や娘の歩(寺島しのぶ)から見放された。家を飛び出た彼は、旧友の寺林(小林稔侍)が館長をしている小さな映画館に転がり込む。そこでは若き日のゴウ(菅田将暉)や寺林(野田洋次郎)が下っ端として製作に携わっていた往年の名画が上映されていた。
助監督として働いていたゴウは、スター女優の桂園子(北川景子)や名監督の出水宏(リリー・フランキー)に可愛がられ、将来を嘱望されていた。大船撮影所付近の小料理屋の娘、淑子(永野芽郁)と恋におちながらも、仕事にまい進していく。だが…
【感想】
過去パートを100点とすれば現代バートは20点といったところでしょうか。冒頭、現代のゴウのみじめな姿が延々と続くのだけど、依存症でわがままな老人に、泣いてばかりで頼りない妻、口の悪い娘の芝居にイライラ感が募ってきます。こんなわがままな老人のいうことを聞く必要はないし、若き頃の淑子があれだけはつらつとしているのに、なんでこんな愚痴っぽくて、夫に振り回されるだけの主体性のないおばあさんになるのか、理解ができません。
過去パートはしっかり作っているのだけど、ちょっとするとまた現代パートに戻るので、集中力が途切れてしまいます。現代パートは3分の2ぐらいばっさり削れば、見やすくなったのに。当初、主役に予定していた志村けんがコロナで亡くなったため、コロナの話題や志村の往年のヒット曲東村山音頭をいれるというのは悪くありませんけど、それにしても現代パートが長すぎる。
一方、過去パートは菅田の演技力の見事さが相変わらずでています。寺林や園子との関係や、淑子への愛情。そして何より映画へのあふれる思い。このあたりを仕草も含めて完璧にこなしている菅田の見事さには拍手を送りたい。また、北川、永野も往年の役柄がヘアスタイルやファッションも含めて似合っているし、セリフ回しなんかもはまっていました。当時の映画界の実情も垣間見られるし、過去パートだけならこのままずっと見ていたい感じでした。
そうはいっても沢田研二のスター性は年をとってもしっかりあります。彼の東村山音頭は、ある意味歴史を記録する大切なシーンになったのかもしれません。山田監督の当時の映画人にささげる献辞も含めて、映画の歴史を感じさせる作品で、邦画界の生き字引ともいえる山田監督にふさわしいテーマでした。それだけに、うーん。現代パートがなあ。
【2021年に見た映画の最新記事】