2021年08月20日

イン・ザ・ハイツ

 ニューヨークの下町で暮らすヒスパニック系や黒人たちの思いをつづったミュージカル。人種問題という重いテーマの一方、ダンスは本当に見事で、アメリカのエンターテイメントの懐の深さを実感しました。

 作品情報 2020年アメリカ映画 監督:ジョン・M・チュウ 出演:アンソニー・ラモス、コーリー・ホーキンズ、レスリー・グレイス 上映時間:143分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマズ座間 2021年劇場鑑賞160本

 【ストーリー】
 ニューヨーク郊外でヒスパニック系移民が多く住むワシントン・ハイツ地区。コンビニを営むウスナビ(アンソニー・ラモス)の元には多くの住民が訪れる。ウスナビは美容師のヴァネッサ(メリッサ・バレラ)が好きだが、なかなか言いだせない。

 街の自慢の秀才でスタンフォード大学に進学したニーナ(レスリー・グレイス)が戻ってきた。実はニーナは西海岸で孤独と差別に苦しんで大学中退を考えていたのだ。元彼のベニー(コーリー・ホーキンズ)の心は揺れる。 

 【感想】
 黒人差別の作品はいっぱいみたけれど、ヒスパニックが差別されている作品はなかなか観なかったのでちょっと驚きました。スタンフォードなんてアメリカでも一番差別が少なそうなのに、やはり問題が起きる。ヴァネッサもニューヨークで不動産を借りようとしたら、やんわりと不動産屋に嫌がらせをされる。ジョン・M・チュウ監督は、アジア系ですし、「クレイジー・リッチ」でもアジア人差別を風刺的に描いていたので、こういう作品はお手の物でしょう。

 一方で、弱者ならではの団結力もある。住民同士は互いに顔見知りで、子供のころは近所のお年寄りに面倒をみてもらった。それだけにこの街をでて、一流大学へ進んだニーナは町の誇りであり、彼女にとっては逆にそれがプレッシャーになってしまいます。それでも、カリフォルニアでは孤独だったのに、ここでは仲間も友人もたくさんいます。故郷がしっかりあるというのはうらやましい。

 そして、ルーツである国への思いというのも移民たちにあるというのも驚きでした。ウサナビは、ドミニカへ帰国することをたのしみにしています。他の移民たちも、自分の出身国の国旗を飾り、アイデンティティを誇示しています。このへんも、これまで知らなかったアメリカをみたようで興味深かった。

 また、いくつかあるエピソードのなかでは、町の中に9万6000ドルの宝くじ当選者がいることがわかり大騒ぎというのも、驚きだした。日本円にして1000万円というのは大金とはいえ、アメリカのような金持ちの国では、それで人生が変わるような金額ではありません。しかし、ニューヨークの郊外になるのに、ワシントン・ハイツの住民は9万6000ドルで大騒ぎするのです。日本から見たアメリカのイメージはシリコンバレーとかウォールストリートで、庶民は9万6000ドルでも大金なんだというのはなんとなく親近感を覚えました。

 ダンスはただただ見事の一言。バックダンサーまで激しい動きで、これは日本ではとてもできないなとしみじみ。ダンスシーンを観るだけでも入場料の元がとれたと思います。故郷、友情、恋愛といったテーマの背景に人種差別をいれ、そして、辛気臭い話はダンスで吹き飛ばす。これぞ、現代のミュージカルといえましょう。
posted by 映画好きパパ at 06:06 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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