2021年08月22日

サマーフィルムにのって

 青春、恋愛、友情、時代劇、SFを全部詰め込んだ映画愛たっぷりの作品。ノースターの若手ばかりで、拙いところもあるけれど、とにかく夢に向かって突っ走る登場人物たちのまぶしさがたまりません。

 作品情報 2020年日本映画 監督:松本壮史 出演:伊藤万理華、金子大地、河合優実 上映時間:97分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2021年劇場鑑賞162本



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 【ストーリー】
 高3の時代劇オタク、ハダシ(伊藤万理華)は映画部で時代劇映画を撮るのが夢だった。だが、文化祭で上映されるのは部長の花鈴(甲田まひる)お勧めの恋愛キラキラ映画。頭にきたハダシは時代劇を文化祭でゲリラ上映しようとたくらみ、親友で天文部のSFオタクビート板=i河合優実)、剣道部のエースブルーハワイ=i祷キララ)に協力を依頼する。

 だが、肝心の主役が見つからない。たまたま入った名画座で、時代劇顔の青年、凛太郎(金子大地)を見つけたハダシは、強引に彼を主役に抜擢。さらに、周りから浮いているが異能の才能を持つクラスメートたちも映画作りに引きずり込む。ところが、凛太郎には秘密があった。なんと、映画がなくなった未来からやってきたタイムトラベラーだったのだ…

 【感想】
 「時をかける少女」や「アルプススタンドのはしの方」、「スウィングガールズ」といった青春映画の良いところを詰め込んで、しっかりと交通整理ができているのは凄い。97分間、1秒たりとも無駄のない脚本、演出にただただみとれるばかりです。

 周囲から認められないで鬱屈したハダシ、剣道部のエースで人気者だけど天然のブルーハワイ、一見斜に構えてるように見えて、だれよりも仲間たちを思いやるビート板。この3人の友情がまず何ともたまりません。それぞれ違ったタイプだから友達になり、親友だからと言ってべたべたしない。それでいて、本人さえ気付いていない気持ちを見抜いて応援する。こんな友人がいたらそれだけで幸せです。

 そして、男性陣も味わい深い。イケメンなのに未来からきたため、現代生活になじめずボケをとってしまう凛太郎。老け顔でみんなからバカにされていたけど、映画の成功のために情熱を燃やすダディボーイ(板橋駿谷、彼は37歳だからそりゃ老け顔だ)、バイクでなく自転車をデコって痛チャリにする小栗(篠田諒)。バットを振る音を聞いただけでだれが打っているかわかる天才的な耳を持つ駒田(小日向星一)と増山(池田永吉)のコンビ。それぞれ日常生活では役に立てず、クラスでもういた存在なのに、まさに映画を作るために生まれてきた感じではじけていくようすはたまりません。

 文化祭に向けて盛り上がるというのも高校生らしくいい。特にコロナ禍で文化祭が亡くなった学校も多い中、胸が熱くなります。実際、撮影はコロナで中断しているので、そうした思いもスタッフ、キャストにあったことが伝わってきます。また、普通、この手の映画では嫌味なライバル役の花鈴も、互いを高めあうライバルに設定されているのが実に心地よい。これぞ青春かつ、時代劇もライバルへの愛憎があってこそ名作になるのですよね。

 映画愛もたまりません。勝新太郎マニアのオタクは座頭市の殺陣を真似しますが、伊藤万理華の運動能力のすごさに、思わず見惚れてしまいます。そして、何のために映画を撮るのか、映画を観ることにどういう意味があるのか。時代劇も恋愛キラキラ映画も等しく、真剣に作って観客が真剣にみることで、光っていくのです。映画オタクにとってこれほどのエールはないでしょう。

 そして、圧巻のクライマックス。思わず立ち上がって拍手したくなりました。あのラストカットは今年みた映画の中でも最も印象的です。金子大地は「猿楽町で会いましょう」に続いて、僕の中で今年最も活躍した俳優になりました。
posted by 映画好きパパ at 07:07 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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