2021年08月26日

夕霧花園

 太平洋戦争中の日本軍の残虐行為は中韓映画で多く描かれているけれど、東南アジアを舞台にした作品を観るのは初めて。阿部寛の好演もあり、エキゾチックで東洋的に物静かなラブストーリーになっています。

 作品情報 2019年マレーシア、イギリス映画 監督:トム・リン 出演:リー・シンジエ、阿部寛、シルヴィア・チャン  上映時間:120分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネマジャック&ベティ 2021年劇場鑑賞167本



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 【ストーリー】
 1950年代のマレーシア。華僑の女性、テオ・ユンリン(リー・シンジエ)は戦時中、妹のユンホン(セリーヌ・リム)が慰安所に連行され、助け出せなかったことが深い傷になっていた。ユンホンは日本庭園を作ることが夢で、彼女の遺志をつぐために戦前は皇室に使えた庭師で、マレーシアの高原に移り住んだ中村有朋(阿部寛)に協力を依頼、弟子入りすることになる。

 1980年代のマレーシア。裁判官として活躍しているユンリン(シルヴィア・チャン)だが、中村との過去の関係がスキャンダルとなり、しかも中村は日本軍のスパイ疑惑がもちあがった。彼は憎い日本軍のスパイだったのか、真相をしろうと、かつて中村とともに作り出した庭園、夕霧花園を訪れるのだが…

 【感想】
 マレーシアを舞台にアジアの才能が結集し、ジュリアン・サンズらイギリスの名優も出演しています。阿部ちゃんはハリウッドには出ないけれど、アジア系の作品には出演するなあという印象です。

 日本軍の残虐行為で妹を失い、自らの体にも傷を負わされたユンリンは、物静かな中にも強い意志を持ち、日本への深い恨みを持っています。だが、皮肉にも亡き妹の願いをかなえるために、日本人である中村の協力が必要でした。この心の葛藤を、抑制された描写でトム・リン監督は巧く描きます。さらに、キャメロン高原の美しい緑、50年代のクラシックな衣装と滅びゆくイギリス風の生活など見ごたえがあります。

 何よりも日本文化を体現し、古武士のような中村役の阿部の存在感でしょう。無口で、仕事には厳しいけれど、夕霧花園という理想の庭園をマレーシアに作ろうとする。セリフは英語ですが、借景とか天龍寺とか日本の文化を代表するような庭師にふさわしいたたずまい。さらに、入れ墨、浮世絵、折紙といった文化にも堪能です。こうした役柄があう俳優は阿部しかいないでしょう。

 やがて、ユンリンは日本への恨みを超えて中村を尊敬し、切ない恋へとつながっていきます。80年代のシーンがインサートされることで、その恋が結ばれなかったことが観客に知らされるわけですが、その理由は何なのか。そして、中村への思いと戦争中の行動は何だったのか、謎が徐々に明かされる様子は上質のミステリー小説のようです。

 日本の戦争加害行為を題材にした作品を8月に見るということも歴史を知る上で重要なことでしょう。でも心に傷を負った男女の深くミステリアスなラブストーリーとして上質な作品です。なお、客席はガラガラだったのに、迷惑行為をするオジサンが後ろの席にいて頭に来ました。こういうしっとりとした作品なのになんで見に来るのだろう。
posted by 映画好きパパ at 06:16 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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