2021年09月01日

ジュゼップ 戦場の画家

スペイン内戦で敗れ、収容所で過酷な生活を送った実在のスペイン画家、ジュゼップ・バルガスの戦時中の苦労をアニメで描きました。ヨーロッパらしい独特でおしゃれなデザインで戦争をとらえており、心に響きます。

 作品情報 2020年フランス、スペイン、ベルギー映画アニメ 監督:オーレル 声の出演:セルジ・ロペス、ブリュノ・ソロ、ジェラール・エルナンデス  上映時間:74分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2021年劇場鑑賞173本



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 【ストーリー】
 スペイン内戦で共和国軍として戦い敗れた画家ジュゼップ・バルガス(声セルジ・ロペス)はほかの大勢の難民と共にフランスに亡命した。だが、フランスの難民収容所は過酷な状況で、飢えと病気で仲間は次々に倒れ、看守からも住民からも虐待を受けていた。新人の憲兵セルジュ(ブリュノ・ソロ)はそうしたなかでも人間性を失わず、ジュゼップたちを何とか助けようと,紙と鉛筆を渡すのだが…

 【感想】
 第2次大戦者の映画だとユダヤ人がフランスからスペインに脱出しようとする作品をよく見ますけど、本作は逆にフランスに脱出してきた難民を描いてます。看守たちは難民を虫けらとしかみておらず、小便をひっかけたり物を強奪していうことを聞かない場合には簡単に殺害したりと、ひどいありさま。この作品がセザール賞のアニメ部門を受賞したというのは、自らの過去の歴史に向き合おうということなんでしょうか。

 一応、セルジュという良心の塊のような人物がでてくるので、フランスの罪もエクスキューズされることになっています。セルジュは意地悪な先輩憲兵から難民に優しいといじめをうけています。一方で、軍の中でも差別されているセネガル兵とも友情を結んでいて、厳しい環境でも人間性を失わないことの大切さがわかります。もっとも、セルジュもゲシュタポに協力したというセリフがありますから、そんな簡単なものじゃないでしょうけど。

 わずか74分の上映時間ですが、収容所の過酷な実体だけでなく、行方不明のジュゼップの婚約者探しやメキシコへの脱出劇も描かれており、知らないことだらけで驚きました。さらに、現在(といっても2010年ごろでしょうか)、年老いて寝たきりになったセルジュが孫に当時の思いでを話すというかたちで、歴史を風化させないという意図も感じられます。ラストは、一本とられたという脚本もうまい。

 オーレルはイラストレーターとして活躍しているそうで、映画監督は初めてだとのこと。フランスアニメの独特のキャラクターデザインにはひきつけられますし、また、収容所での暗い色調と現在の明るい色調の対比など、イラストレーターならではの色使いも感心しました。収容所関係の映画がこの夏多いですけれど、アニメということで他の作品とは違った良さを感じられました。
posted by 映画好きパパ at 06:03 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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