2021年09月05日

岬のマヨイガ

 東日本大震災直後の岩手県を舞台に、行き場のない2人の少女がマヨイガ(訪れたものに幸せをもたらす不思議な家)で暮らすファンタジー。コロナ禍の今と共通するところもあり、癒しと冒険活劇がまじった良作です。

 作品情報 2021年日本映画アニメ 監督:川面真也 声の出演:芦田愛菜、粟野咲莉、大竹しのぶ  上映時間:105分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ港北 2021年劇場鑑賞177本



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 【ストーリー】
 東日本大震災直後、岩手県の海辺の小さな町の避難所。8歳のひより(声・粟野咲莉)は両親を交通事故で失い、引き取られた先の親戚も津波で亡くなりショックで声がでなくなった。17歳の家出少女ユイ(芦田愛菜)は困っていた彼女を助けたことで知り合いになる。行き場のない2人を、キワ(大竹しのぶ)という不思議な老女が引き取る。

 岬に立つキワの古い家で暮らすことになった2人は次々と不思議な体験をする。キワの説明によると、そこはマヨイガであり、家自身が感情を持っているというのだ。マヨイガでの生活で2人の心は少しずつほぐれていく。だが、震災で邪悪な蛇の妖怪「アガメ」の封印がとけてしまった。再び町に不幸が訪れるのを防ごうと、キワはカッパや地蔵、天狗など東北地方の妖怪たちと対策を話し合う。

 【感想】
 親を失ったひよりと、父親からのDVで家出してきたユイにとり、最初はキワは得体のしれない老女でした。テレビもないような昔ながらの生活をして、家事を手伝って体を動かすうちに2人の傷ついた心が癒されていきます。その丁寧な描写は観ていて心地が良い。

 同時に2人の成長物語でもあり、学校で友達ができたひよりや、町の人たちとふれあるユイ、何より2人を見守るきわとの関係で、2人は自分たちもただ守られるだけでなく、大切なものを守る立場でもあることに気付いていきます。前半は日常系の緩やかな物語だったのが、後編が冒険活劇のように変化していくテンポもよい。

 冒険活劇といっても無敵の存在ではありません。かといって、みんなの力を結集した応援で頑張る、というようなご都合主義でもない。東北の伝承を踏まえつつ、カッパ、地蔵といったふしぎ人たちとの協力をえて、何とか町の不幸を防ごうとする3人の活躍ぶりは、ナチュラルに思えて、同種のアニメのなかでも白眉ではないでしょうか。

 また、カッパがキュウリの入ったパスタを食べて喜んだり、座敷童と仲良く遊んだりとか、小ネタもたくさんあります。「マヨイガ」というテレビアニメではシリアスな存在ですが、本作ではまさに傷ついた心を癒してくれる暖かい家で、こういうところに暮らせたら良いのにと思いました。

 芦田、大竹も他のアニメの主演があり、物語にすんなり溶け込んでいます。カッパたちの声はサンドウィッチマンの2人や達増岩手県知事など東北ゆかりの人がゲストとして担当してますが、これも物語に溶け込んでいます。夏休みの終わりにじっくり観るのにふさわしい作品でした。
posted by 映画好きパパ at 06:46 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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