本作はノルウェーが舞台というこれまでみたことないテーマ。真摯につくっています。
作品情報 2020年ノルウェー映画 監督:アイリク・スヴェンソン 出演:ヤーコブ・オフテブロ、クリスティン・クヤトゥ・ソープ、ピーヤ・ハルヴォルセン 上映時間:126分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:キノシイネマみなとみらい 2021年劇場鑑賞184本
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【ストーリー】
オスロでボクシングをしながら実家の商店を手伝うユダヤ人青年チャールズ・ブラウデ(ヤーコブ・オフテブロ)は、最愛の女性、ラグンヒル(クリスティン・クヤトゥ・ソープ)と結婚して、人生最良の日々を送っていた。
だが、1940年ナチスがノルウェーに侵攻。ユダヤ人の男性は国内の収容所にとらえられてしまう。ノルウェー人のラグンヒルは何とかチャールズを助けようとするが難しく、チャールズは父のベンゼル(ミカリス・コウトソグイアナキス)らと収容所に送られる。そして、戦況が深まりノルウェーのユダヤ人もアウシュビッツなどの収容所に送られることが決定。チャールズの老母サラ(ピーヤ・ハルヴォルセン)も逮捕され…
【感想】
チャールズ一家は実在の人物。どこにでもいる平和で幸福な家庭がユダヤ人であることでぶち壊されるというのの象徴として取り上げられています。問題なのは反ユダヤ人の風潮や占領政府へのおもねりもあるためか、ノルウェー政府や警察官、そして庶民までが積極的にユダヤ人迫害に協力していたということ。北欧というと自由と人権の国のイメージがありますが、戦時中はそうでなかったことが白日のもとにさらされていきます。
チャールズは両親や兄弟とともに地道にいきていました。商店主として近隣と付き合い、ボクシングの練習に熱心に取り組み、そして恋をする。そんな当たり前の生活がなんでユダヤ人だから迫害されるのか、そして、同じノルウェー生まれのはずなのに、警官や看守はなんでこんな酷いことができるのか。さらに、ユダヤ人の財産は近所の住民が盗んでしまいます。彼らの不当な仕打ちは静かな描写で取り上げられ、それだからこそ怒りが伝わってくる秀作です。
歴史をしっている僕らからすれば、さっさとスウェーデンに逃げ出せば助かったのにと思わされます。しかし、一家はリトアニアから亡命してきて、ノルウェーが安住の地だと思っていたのでしょう。その地に裏切られたという事実は実に重たい。一家もホロコーストで離散して、命を落とした人もでてきます。これはノルウェーだけでなくフランスなどナチスの占領地で実際に起きていたこと。自分がもし、ノルウェー人の立場だったらどうしただろうか、と観ていて考えていました。
なお、ユダヤ人迫害の指揮を執った秘密警察の副本部長(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)は戦後も警察で高い地位をしめたそう。そして、彼ですら国のコマでしかなかったわけですから、余計に自分がこういう立場になった時にどうするだろうかと思ってしまいました。なお英語の「Betrayed」(裏切られた)みたいな邦題のほうが良かった気がします。
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