作品情報 2020年イタリア、ベルギー映画 監督:スザンナ・ニッキャレッリ 出演:ロモーラ・ガライ、パトリック・ケネディ、ジョン・ゴードン・シンクレア 上映時間:107分 評価★★★(五段階) 観賞場所:シアターイメージフォーラム 2021年劇場鑑賞190本
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【ストーリー】
1883年、父カール・マルクス(フィリップ・グレーニング)の死後、末娘のエレノア(ロモーラ・ガライ)は彼の遺志をついで社会主義運動の発展や労働運動に力を入れていた。やがて、劇作家のエドワード・エイヴリング(パトリック・ケネディ)と恋に落ちる。
だが、エドワードは離婚をしておらず、不倫関係だった。さらに金にも女にもだらしのない彼に苦しめられるエレノア。一方、労働運動や女性の参政権問題などの運動も困難ばかりで、エレノアは次第に疲弊していく。
【感想】
伝記映画だからしょうがないとはいえ、父の死と最愛の恋人の出会いと生活、エンゲルス(ジョン・ゴードン・シンクレア)をはじめとする社会主義者たちとの活動、さらに父の隠し子騒動など親類関係のごたごたなどエピソードがてんこ盛り。順調に消化しきれないうちに話が進んだり、あるエピソードで重要な人物がその後一切登場しなくなったりという感じで、なかなかついていくのが大変でした。
19世紀末の産業革命の裏では子供の長時間労働、公害や疫病に苦しめられる下層労働者など社会問題はたくさんでています。また、労働運動をしている仲間たちですら、男女平等という概念は抜け落ちています。そんななか、女性で労働運動家というエレノアの奮闘ぶりはすごい。深夜の児童労働の禁止など労働運動の成果も上がっています。一方で、貧富の格差拡大や男女不平等は現代にも通じる話。この部分のエレノアの活動は、時折、スクリーン越しで目線を観客に向けて訴えることがあり、なかなか趣がありました。エンゲルスとの関係とか、社会主義者たちがアットホームな雰囲気だったのも、時代の差を感じました。
一方で、恋愛場面はこれまた伝記映画だからしょうがないけれど、ダメ男のエドワードにひたすら尽くすのははがゆい。理論では男女平等を訴えても、感情はそれに追い付かないということが人間らしいといえばらしいのですが、これも結局テンポが良すぎて、男女の感情の機微を描くというところまではいってないのですよね。言葉は悪いけれど、才能を男で無駄遣いしてしまったようにしかみえませんでした。
テーマがテーマなだけにポップな演出で興味をひこうとしたのか、BGMがクラシックやインターナショナルの歌を現代風にアレンジしたり、パンクっぽいダンスをいれたりして、そこは賛否がわかれるところ。「人形の家」のモチーフもちょっと分かりにくかったかな。
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