2021年09月20日

浜の朝日の嘘つきどもと

 人生にとって映画を見る意味は何なのかという本質的な映画愛を突きつける作品。高畑充希の好演もあって面白いのだけど、コロナが作中話題になっているのだから、マスクをつけたほうが、より深刻さが伝わって良かった気がします。

 作品情報 2021年日本映画 監督:タナダユキ  出演:高畑充希、柳家喬太郎、大久保佳代子  上映時間:114分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座 2021年劇場鑑賞193本



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 【ストーリー】
 福島県南相馬市にある小さな映画館「朝日座」。100年以上の歴史があるが、東日本大震災に加えて新型コロナの影響で客は入らず赤字続き。支配人の森田(柳家喬太郎)は閉館を決意した。そこへ茂木莉子(高畑充希)と名乗る若い女性が現れ、閉館を何とか食い止めようとする。

 実は彼女の本名は浜野あさひといい、高校時代にいじめで自殺しようと決意していたところを救ってくれた恩師の田中茉莉子(大久保佳代子)との約束で、朝日座を存続させようとしていたのだ。そんな事業をしらない森田や町の人は行動力だけはある茂木の突飛な行動に困惑しつつも、もう一度映画館の大切さを思い出すのだが…

 【感想】
 朝日座は実在の映画館ですが30年前に閉館し、今は地元のコミュニティー事業などで使われているそうです。コロナ禍で地方の小さな映画館の経営が大変なのはいわれています。そうしたなか、映画に人生を救われたと思っている女性が颯爽と現れ、事態を動かすのは小気味いい話です。

 思ったより、あさひと茉莉子の高校時代の話が長く、震災後、ある事情からいじめられていたあさひが、一見ぶっきらぼうな型破りの茉莉子に映画を見せられることで命も心も助かったというのは、映画ファンにとってはうれしい設定です。もっとも、取り上げられる作品は「喜劇 女の泣きどころ」(1975年の邦画)、「東への道」(戦前のアメリカ映画)など、割と映画好きな僕ですら知らない作品ばかり。大人の事情があったのかもしれませんが、渋すぎる選択でびっくりしました。

 さて、映画万歳のハートフルな話になると思いきや、現実のシビアなところもつきつけます。映画館の跡地にはスーパー銭湯が建設予定で、客も来ない映画館とどちらが地域のためになるのか。あるいは、閉館間際になると急に惜しむ声が高まり客が集まるけど、それはいつまで続くのかといった急に現実的な話がでてきます。そもそも、いくら名画座的役割があるにしても「喜劇 女の泣きどころ」にそんなに客が入るのかという気もしますし。

 さらに、映画で救われなかった人がいるエピソードもさりげなくはさみ、あさひにとって映画で救われたけど、それが万人に通じるものでないということも表してくれます。それでも、映画好きの人が映画を見に行くのはなぜか。何を求めて救われているのかと、ちょっと現実に立ち返って自分自身のこととか考えてしまいました。それだけに、ラストがちょっと自分にあいませんでした。まあ、続編はテレビドラマになっていてつなげるためにはあのラストかもしれませんけどね。ちなみにドラマ版も秀作なので、配信などでぜひご覧ください。

 高畑は口は悪いけど映画にまっすぐというちょっと変わった女性ならお手の物。彼女をスクリーンでみているだけでも満足です。この年代の女優で独自のポジションを築いています。高校生役も違和感なしにみられるのは凄い。また、柳家喬太郎、大久保佳代子という俳優でない人が主要キャストに起用されていますが、これも他の俳優の起用が考えられないほどはまっています。吉行和子や光石研といったベテランがちらりとでてくるのは、ご愛敬。

posted by 映画好きパパ at 06:50 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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