2021年10月02日

由宇子の天秤

 ジャーナリズムの暗部をえぐる作品で、正義とは何か、真実とは何か真摯に向き合った社会派作品。ただ、僕はメディア人は基本的にクズだと思っているので、ラストは今一つあいませんでした。

 作品情報 2020年日本映画 監督:春本雄二郎  出演:瀧内公美、河合優実、光石研  上映時間:152分 評価★★★★(五段階) 観賞場所:ユーロスペース 2021年劇場鑑賞204本



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 【ストーリー】
 女子高生自殺事件を取材しているドキュメンタリー・ディレクターの木下由宇子(瀧内公美)は、お涙頂戴の分かりやすいストーリーを求めるテレビ局の横やりをうけながら、真摯に取材していき、被害者の母矢野登志子(丘みつ子)からも信頼を得るようになっていった。

 空いている時間は父の政志(光石研)の経営する小さな学習塾を手伝っていた由宇子だが、生徒の一人小畑萌(河合優実)の様子がおかしいのに気づく。それには由宇子も巻き込む衝撃の事実が隠されていた…

 【感想】
 ジャーナリストというのは真実を追及しなければいけません。そのためには人間性がおろそかになってもしょうがなく、はたから見ればクズです。逆に真実を追及せずにその場でやりすごそうとする人間は、ジャーナリストを偽装しているようなものですからやはりクズです。自殺事件を追及しようと、近所の人から水をぶっかけられたり、強引に取材につきすすむ様子は並大抵の精神ではできないため、人としてはクズともいえましょう。一方で、視聴率のために真実をねじまげようとする局の上層部はもっとクズです。現実だと、真実などまったく興味がなさそうなラーメンジャーナリストが炎上してますが、ジャーナリストってだれでも名乗れるだけにこうした問題が後を絶たないのですよね。

 その真実を追及するほうに秤が傾いていた彼女が、自分が当事者になった場合にどうなるのかというのがこの映画の白眉。これはすべてのジャーナリズムに突き付けられるでしょう。テレビ朝日の社員が五輪中、酔っぱらってけがをしたことを大きく伝えませんでした。組織だったらマスコミといえども自分の利益が最優先で不祥事は隠そうとします。でも、それがフリーであり、個人だったらどうするべきなのでしょうか。

 真実か人間の情か秤が揺れ動くわけで、現実だったらどちらをとってもある意味仕方がないと思います。しかし、ここはフィクションなので、僕は由宇子の行動が納得できませんでした。どのような選択をとるにせよ、真実が明らかにすることが一番大事なことなのにという気がしてなりません。

 組織としても個人としてもうまく立ち回っているのがプロデューサーの富山(川瀬陽太)です。仕事と自分の良心をどうやって両立させるか、由宇子から付きあげられようとも、局上層部を何とか妥協しようとして番組を放送させることを第一に考えます。これが大人の対応なのかもしれませんけど、でも、それでは結局真実のすべてが明らかになるわけではないので、本当にそれが正しいのかという問題も起きてきます。いずれにしろ、観た人にいろいろ考えさせる傑作でした。BGMがないのも特徴的。

 瀧内、光石、川瀬らベテランはさすがの貫禄ですが、「サマーフィルムに乗って」でビート板役ののんびりした女子高生を演じた河合の演技がすばらしい。彼女がいっていることが事実かどうか、由宇子や自分の父親(梅田誠弘)への思いはどうだったのか、繊細な心情を伝えてくれます。脇役にいたるまで巧い人ばかりそろえています。フェイクニュースが騒がれ、メディアと権力の関係が問題になる現在だからこそ見るべき作品でしょう。
posted by 映画好きパパ at 06:54 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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