2021年10月03日

MINAMATA ミナマタ

 水俣病を世界に伝えた写真家ユージン・スミスの水俣での苦闘を描いた社会派映画。脚色されたところもありますが、今だに水俣病関連の訴訟も続いており、歴史上のできごとだと思った自分の知識の無さに反省です。

 作品情報 2020年アメリカ映画 監督:アンドリュー・レヴィタス  出演:ジョニー・デップ、美波、真田広之  上映時間:115分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:ムービル 2021年劇場鑑賞205本 



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村

 【ストーリー】
 1971年、国際的な写真家ユージン・スミス(ジョニー・デップ)は戦争取材のトラウマからアルコール依存症になり、家庭も崩壊していた。そこへ、日本のテレビCMの撮影で日系人のアイリーン(美波)がやってきて、水俣に来て苦しんでいる現地の人たちを撮影してほしいと依頼する。

 最初は断るが、現地の様子をしりLIFE誌編集長のロバート・ヘイズ(ビル・ナイ)の協力で来日する。そこで苦しんでいる人たちをみたフラッシュバックもありなかなか撮影に入れない。ようやく撮影を始めるが、公害を出した大企業チッソの妨害もあり…

 【感想】
 水俣病はチッソの工場が排出したメチル水銀が原因の公害病で、国の認定患者は2000人、さらに多くの未認定患者がいるとされます。現在も未認定患者による訴訟が続いています。ユージンが来日したころには、既に公害と認定されていましたが、それまでにチッソや御用学者、通産省などは公害だと認めておらず、公害と認定後も差別がありました。

 ユージンの写真が世界に水俣の現実を伝えたのも事実ですし、チッソを取材中に襲われて、その後遺症でなくなったのも事実です。映画は話を盛り上げるためにいくつかの脚色がしてありますが、それでも水俣病について向き合う機会になるでしょうし、エンドロールで今も世界中で公害が起きている写真が流れているのをみると、何ともいたたまれない気分になります。

 ジョニー・デップはシリアスかつ老けメイクでユージンになりきります。「由宇子の天秤」の感想でジャーナリストはクズだといいましたが、ユージンもアルコール依存症で家庭は崩壊、さらに公害の真相を究明するために、チッソの施設に侵入する(フィクションだと思いますが)違法行為も行っています。けれどもそこまでやらないと、大企業や国、自治体に守られた悪事は明るみに出ないのですよね。暴力を受けて挫折しそうになりながらもアイリーンや地元の人たちの助けを受けて撮影に取り組む彼の姿をみるとジャーナリストというのはかくあるべきだと感動します。

 そのユージンを支えるアイリーンは凛としており、時にはユーモアを交えて陰に陽に活動していきます。彼女の魅力を美波が英語のセリフでうまくあらわしています。このほか、地元住民役で真田広之、浅野忠信、加瀬亮、チッソの社長役で國村隼と海外の映画でも活躍する面々が登場。特に國村は単なる悪役でなく、したたかででも内心では人間的な部分もある複雑な役をこなしていました。さらに、水俣病の娘を持つ母親役の岩瀬晶子は、実際にユージンが撮影した有名な写真の構図を見事に再現しており、映画の深みを増しています。

 アメリカでは不運なことにジョニー・デップのスキャンダルで上映が無期延期になっています。しかし、公害は今なお大きな社会問題ですし、ジャーナリズムとしてのありかたにもきちんと向き合っており、俳優のスキャンダルとは切り離して多くの人に見てもらいたい作品でした。

posted by 映画好きパパ at 07:03 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。