2021年10月05日

アイダよ何処へ

 欧州で戦後初めて起きたジェノサイド、ボスニア紛争のスレブレニツァの虐殺を描いた作品。ひたすら重く、見終わった後、ぐったりとしました。親ガチャとかいうけど、日本に生まれただけで勝ち組の気がします。
  
 作品情報 2020年ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、オーストリア、ルーマニア、オランダ、ドイツ、フランス、ノルウェー、トルコ映画 監督:ヤスミラ・ジュバニッチ  出演:ヤスナ・ジュリチッチ、イズディン・バイロヴィッチ、ボリス・イサコヴィッチ  上映時間:101分 評価★★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2021年劇場鑑賞208本



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村
 【ストーリー】
 1995年、ボスニア紛争末期。ボスニア・ヘルツェゴヴィナの地方都市、スレブレニツァはムラディッチ将軍(ボリス・イサコヴィッチ)率いるセルビア人勢力に包囲されていた。国連は安全地帯を宣言して、カレマンス大佐(ヨハン・ヘルデンベルグ)らオランダ軍400人を派遣したが、多数のセルビア人勢力の前では無力だった。

 やがて、セルビア人勢力は町への攻撃を始め、多くの住民が国連軍基地に逃げ込む。地元の高校教師、アイダ(ヤスナ・ジュリチッチ)は国連軍の通訳をしており、まだ、基地に入れない夫のニハド(イズディン・バイロヴィッチ)や子供たちを救おうと奔走する…

 【感想】
 ボスニア紛争は旧ユーゴの複雑な民族問題もあり、僕も含めて日本ではあまり知られていません。しかし、セルビア人勢力は民族浄化をうたい、虐殺など戦争犯罪を繰り広げました。
ヤスミラ・ジュバニッチ監督は「サラエボの花」などでボスニア紛争で被害に遭った女性の立場の作品を撮り続けております。そのなかでも本作はとりわけヘビー。なぜ、アカデミー外国語賞を逃したのか不思議です。

 旧ユーゴは紛争以前は民族同士が平和に暮らしていました。セルビア人勢力の兵士にもアイダの教え子がおり、気軽に話しかけてきます。さらに、紛争から時間がたった現在は再び、多民族が町で共存しています。その、昨日までは友人で隣人だった人が突然襲い掛かるというのは、ゾンビ映画なんかでは定番ですが、実際にこうしたことが起きるのは恐怖以外の何物でもありません。

 映画の大半は虐殺の直前を描いており、直接的な残酷描写は避けているにもかかわらず、ひたすら一方的な虐殺に精神がまいるのですが、誤解を恐れずに言うとナチスのユダヤ人虐殺をはじめ、同種の映画は何本もあります。しかし、本作でとりわけ怖いのは、エピローグ的な現在の描写で家族や友人を率先した殺した人物と感情を押し殺して近所付き合いしていること。現在もこの世の地獄が続いているとしか思えません。

 また、ルワンダを扱った映画もそうですが、国連軍がひたすら無力でしかない。住民にとって、国連基地は安全を保障してくれる場所のはずでした。しかし、現地の指揮官といえども、国際社会の間では組織のコマでしかない。自らの安全や国際政治の駆け引きのなか、結局、虐殺を阻止することはできません。

 アイダは家族を救おうと必死に走り回ります。友人や小さな子供を見捨てまでもとにかくあらゆる手段を使います。自分がその立場におかれたときにどう行動するのか。あらゆる人に突きつけられる重い問題です。たった20数年前の出来事ですから、アイダのような人が今もボスニアで生きているというのも何ともやりきれない思いをさせられます。ちなみに、主演のヤスナ・ジュリチッチはセルビア人であり、ボリス・イサコヴィッチとは現実の夫婦です。そのため、母国では非難を浴びており、今も紛争の傷跡が残っていることがわかります。
posted by 映画好きパパ at 05:58 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。