2021年10月07日

護られなかった者たちへ

 東日本大震災や生活保護という重たいテーマを扱った作品ですが、邦画特有のラストに無理やり希望をもたせるよう点はあわなかった。まあ、桑田佳祐主題歌の時点で想定はしていたんですけど。

 作品情報 2021年日本映画 監督:瀬々敬久  出演:佐藤健、阿部寛、清原果耶  上映時間:134分 評価★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ川崎 2021年劇場鑑賞210本



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 【ストーリー】
 東日本大震災から10年目の宮城県で、全身を縛られて放置されたまま餓死させられる殺人事件が2件発生する。県警の笘篠誠一郎刑事(阿部寛)は被害者の三雲(永山瑛太)と城之内(緒形直人)が以前、同じ福祉事務所で働いていたことを突き止める。そして、生活保護をめぐるトラブルが原因ではないかとみて、三雲の部下、円山幹子(清原果耶)に同行して生活保護の実態を調べて回る。

 捜査線上に、その福祉事務所に放火して逮捕された男、利根泰久(佐藤健)が浮上する。実は笘篠も利根も震災で大事なものを失った被災者だった。笘篠は震災に事件のカギがあるとにらみ、当時を調べるのだが…

 【感想】
 東日本大震災で家族や友人を亡くし、家や職場を失った被災者たち。生活も困窮して生活保護を受けざるを得なかった人もいたことは知っていました。本作もそういう重いテーマを扱っていますし、瀬々監督の抑制され陰鬱な演出に出演者たちも応えています。理不尽に苦しめられているときは、声を上げることの重要性も観ている人に伝わればいいと思います。

 ただ、ミステリーとして観た場合、動機が逆恨みっぽいのと、回想シーンで犯行時の様子が流れるとはいえ、ちょっと犯行方法に無理があるのではと思ってしまいます。特に動機の点は被害者がわざわざいわせたセリフがあまり現実味がなかった。さらに震災で妻子を失った笘篠の過去も絡めて、感動っぽくしたてるのはちょっと。特に現在と震災直後を交互に移しているのだけど、それがちょっと頻繁すぎるし偶然すぎるというのも気になりました。原作は未読ですが、僕の好きな映画「悪人」を原作と比べたときに、あまりに偶然が続く小説の場面は映画でカットしていたのをつい思い出してしまいました。

 また、物語のテーマとなる生活保護については自治体の水際作戦がなぜ行われていたのかが掘り下げられていませんし、笘篠が幹子と一緒に回った先の出来事が、あまり、効果的にいかされていなかったのももったいなかった。それでも、震災と生活保護という重いテーマに真正面から取り組んでいる製作陣と、それに応えた出演者たちの姿勢は共感できるものがありました。

 阿部と佐藤の組み合わせはよく、クライマックスでのやりとりは良かったし、タイトルの意味も噛みしめたくなります。けど、なによりMVPは朝ドラとはまったく違う顔を見せた清原がとりわけ印象深い。朝ドラも本作も宮城県が舞台ですが、本作の幹子は保護費で遊んでいるヤクザのような不正受給者(千原せいじ)にも敢然と立ち向かい、その時の目力の強さはすごいものがあります。このほか、彼女の目の演技だけでも圧倒されます。

 このほか、倍賞美津子、吉岡秀隆ら豪華キャストが惜しげもなく登場。吉岡や緒形は瀬々監督の「64」でも重要な役割で登場しており、今作でもみせてくれます。

posted by 映画好きパパ at 06:01 | Comment(0) | 2021年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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